記憶喪失マスター ホルス奮戦記 その4 〜マスター初めて物語、今度は戦争だ、その前に外交だ〜
「いざ征かん、波頭の彼方へ、我が精強なる軍団よ大陸を制覇するのだ」
島内を掌握したわが軍は、漸く船団を完成させ、大陸へと向かって船出した。

「わずか数ドット先にある場所なんですけどね」
早速、人のやる気を削ぐ使い魔、こいつ本当は私のサポート要員じゃなくて、
実はライバル魔術師が送り込んできた敵の妨害要員じゃないかと疑ってしまう。
「やかましい、こういうのは大げさのほうが、景気よくて良いんだよ、
ほら行くぞ、そら行くぞ、そーれ行くぞ、」

どんぶらこ どんぶらこ

「・・・・・また随分と暢気に波切る音だな、それに船足も遅いぞ、おまけに小さい」
「そりゃ急造な上、船のクラスは最低クラスのトリームですからね,勇壮に行きたいならせめてウォーシップを用意しないと」
事前に先を見越してね、との使い魔の言葉は、耳パッタンで聞いてなんてやらない。
そうなのだ、まずは島内のノード攻略を最優先し、他の事には全く目を向けて来なかった為、いざ大陸侵攻という段階になって、実は我が軍は船を一艘も保有していない事に気が付いた。
あはははのは、などど笑って誤魔化したら、使い魔に思いっ切り馬鹿にした目つきをされた。
これはなんとかしなくてはと、いくら気がせっても、船が無ければ別の大陸になんて行けない、だからといってこのまま島の中で一生引き籠もっている訳はいくまい、そんな事をすれば

南の島の王様は〜♪
その名も無知なホルス様〜♪
とっても暢気な王様で〜♪
記憶無いから、馬鹿をして〜♪
やっぱり失敗、不貞寝する〜♪
まぬけだね♪
まぬけだね♪
おまぬで暢気だね〜♪    
作詩、作曲: 使い魔

「って、お前が歌うなーーーーっ」
などど、おちょくられる日々を送る事になる。

そうであるため、今までの陸軍増強一辺倒の方針を大転換、泥縄式も良いとこ、と言う使い魔の言葉を聞き流して、海軍創設の為に船団の建造に着手し、また散財をと嘆く使い魔を無視して、報奨金をばら巻き船の建造を急がせ、魔法実験の為の材料集めと勘違いされますよという使い魔を、やかましいっと、一喝し、追い立てるようにして移民者を募り、セテラーを一部隊組織して、船に乗せて出発させた。

「あの、マスター?」
先ほど出ていった船団が最初で最後では無い、この後も戦力を順次送り出すつもりだ。
その為にはまだまだ船が必要、今はトリームだが、いつかはウォーシップの船団を。
「だから、マスターってば」
「だから、なんだ」
人がこの後の事をいろいろ考えているというのに、使い魔が、袖を引っ張る。
「大陸侵攻はいいんですけど、僕達の軍の戦闘部隊が港町にたむろしてて、数が減ってないのはなんでです?」
使い魔は只今船団建造まっさかりな港町を見ながら言う。
「ああ、散らばった軍の集結を待っている時間が惜しかったからな、
とりあえず先にセテラー部隊を向かわせた」
「・・・・・」
使い魔の沈黙。こいつが沈黙する時は大抵次にくるのが小言なので、身構える。
「そ、それがどうした?他の魔術師に遅れをとらないように、急いで橋頭堡を作れって言ってたよな」
「ええ、言いました」
「ならば良し」
これで話はお終いと腕を組み、遠くを見る、城の中だから壁しかないけど、そこに大陸の地平線があるかのように見る。うむ、いかにも歴戦の将が余裕の進撃をしているようだ。
「守備隊は?誰が、出来たばかりの無防備な町を守るんです?」
汗が・・・汗がつつっと頬を伝う。
「か、」
「か?」
神が護ってくれると思わず言いそうになったが、
魔術師のあんたが何言ってるんですかっっ!
などと怒られそうなので、別の言葉を探す。
考えろ、考えるんだ私、この場をうまく言い逃れ、じゃなくてこの小生意気な使い魔がひれ伏して、以後の忠誠を誓うような気の利いた言葉を、ひねり出すのだ。
でないと、どんなお小言、皮肉が飛び出して、何日頭が上がらなくなるか。
最近どうもメイド達にこの城の真の主人は、使い魔であるこいつだど思われてるいるふしがある。
それを防ぎ、再び復権する為にも、フル回転しろわが脳細胞。
「マスター?」
おおぅ、相手は疑って居るぞ、気をつけろ、時間はもはやナッシングだそ
さあ、導き出せ、『か』で始まる最高の答えを
「もしかして」
くっ、敵はついにチェックメイトの手をあげたぞ
くそ、あいつ、最近あの肉球を触らせるという荒技でメイド達を籠絡する術まで身につけやがって。
いや待て、どうでもいい事を考えんじゃない私よ。
焦るな、焦るんじゃないぞ私、そうあるではないか、『か』で始まるこの場に相応しいその言葉が、今こそ言おう、そう高らかに さながら福音の如くっ。
「か」
「か?」
「考えてなかったっぴょーん」
あれ?
もしかしなくても、私、今最低の答えを口走った?ぴょーんって何?
はぁ・・・と使い魔の深い深いため息。それで全てが終わってしまった事を認識してしまった。
終わった・・・私のターン終わり、次は使い魔の口撃のターン。
ちなみに私の防御力は0
「すぐにキャバリー部隊向かわせます。到着するまでセテラー部隊には町を作らせないように」
「すまん、頼む」
これ以外言えると思う?

思わぬ醜態をさらしてしまったが、別大陸進出の橋頭堡の町は出来た。
そして本拠地の町から出発していく我が軍団、別大陸に到着するや、キャバリー部隊は大地を駆け抜け、未知なる大陸内を次々と踏破し、偵察部隊からの報告を元に詳細な地図が作られて行く。

そして、我が軍団の大陸侵攻の主力としてバーバリアンの特殊兵科、バーサーカー軍団がついに作られ始めた。
武器庫、兵舎、武術師ギルドと順調に建物をレベルアップさせ、武術師ギルドのマスターらと日夜討議、研究して後に出た答え。
そう、我等の種族の特性をいかんなく発揮し、最大限の力を発揮する兵科。
「見よ、この軍事ユニットの進化の果ての特殊ユニット、棍棒持ったバーサーカーらの勇姿をっ」
「退化してますね、主に知性方面」
相変わらず、使い魔が余計なチャチャをいれて来る。
「黙らっしゃい、だいたいあいつらに斬る、突く、弓をひく、なんて事を器用にこなせると思うか?やつらの本領、それは叩く、つぶす、引き裂く、まさにこのバーサーカーこそが我がバーバリアン軍団の切り札となるユニットだ」
「でも、これガンサーさん大量生産って気も・・・」
「その名前を出すんじゃないっっ、いきなり全滅しそうだろ」
「はぁ〜」
最近ため息の多い使い魔、こいつの白い毛が実は白髪だったなんて言われたらどうしよう。
「お前も、ネガティブな発想で物事を見る癖はやめろ、見ろ、あのバーサーカー軍団の勇壮な姿を、実に頼もしいじゃないか」
「でも、バーサーカーの攻撃スキルって投擲ってありますよ」
「 なに?」
そういえば、スピアマンにもソードマンにもそんなスキルがついていたような気が・・・・キャバリーでばかり戦っていたので気にもしてなかったが。
い、嫌な予感が・・・・。
「あっ、」
「な、なんだ、どうした?」
「みんな、棍棒投げてる」
「ぶっ!?」
「あー、投げた棍棒拾って・・・・また投げた、おおっ、拾えないと、敵を殴ってる」
「・・・・・」
「なるほど、それで近接攻撃なんですね」
納得した使い魔は、ぽんと手を打つ。
「成程じゃなぁぁぁぁぁぁい、あいつら、どこまで馬鹿なんだっ!」
なんと言うことだ、戦闘力に特化したせいか、頭の中の筋肉まで増量してしまったようだ。
だが嘆いていても、あいつらにまともな武器の使い方を教えてたら、
まごまごするだけで、却って戦力低下になりかねない、仕方がないのでセットで投げ斧を開発持たせる事にした。
そうか、それで分かった、なんでこいつら作成コスト150%なのか。

多少の紆余曲折はあったが、バーサーカー軍団は次々と作られていく
「見るがいい、このバーサーカーの群れっ」
うごあぐごあがあああ ごるああああああああ、がはぁぁぁぁぁぁっ
「なんか、知性の欠片も無なくて、ほんと群れって感じ」
「それを率いのは英雄ブシャン!」
「ふはははははははははははは、この高貴なる私の全てまかせるがいい ふはははははははは」
「ブシャンさんの特殊スキルってなんでしたっけ?」
「高貴」
「ですよねー、でもなんかバーサーカー達に異様に溶け込んでますね、ブシャンさん、高貴ってなんだろ?」
それは難しい質問だ、使い魔よ、私も知りたい。
「・・・・そ、そして、我が魔法より生み出された幻想生物のユニコーン」
ヒヒヒーーーン
「あ、ブシャンさんの馬と喧嘩し始めた・・・あーあ、あの人振り押されちゃって・・・・なんでまだ笑ってるんだろ、あの人」
「あ、上げよ雄叫びを、轟かせよ、かの大陸全土に響き渡るように、我等が軍団の精強さを知らしめるのだ」
うごあぐごあがあああ ごるああああああああ、
ふはははははははははははは
ヒヒヒーーーン
「みんな喧嘩し出してますよ、これじゃあ、馬鹿っぽさを見せつけるだけなんじゃ・・・・」
「お前ら、みんなそこに直れっっっ、説教してやるっ! 使い魔お前もだ!」

苦労したが、なんとか大陸侵攻軍を編成して、上陸させ、さて敵はどこだという時に。
「マスター、マスター」
使い魔が慌ててやって来た。
「何用か、使い魔よ」
やはり小さいながらも島一つ統一したせいか、最近自分もそれっぽく振る舞えるようになってきた、こう豪華な椅子に座ってふんぞり返るというのも、なかなか癖になりそうだ。
目の前までやって来た使い魔に鷹揚に頷いてみせる。
「他の魔術師からの通信です」
「なんだとっ!?」
そんなの居たのか?
いや、居るに決まっている、私は魔術師戦争やっているんだから。
今まで島一つの中でごちゃこちゃやってたから忘れてた。
というか、忘れさせる程いろいろショッキングな事が起こりすぎた。
だとしたら、これから本格的な戦争の始まりだ、他の魔術師との魔法どんぱち合戦、うーん、何か緊張してきた。
多分相手は私より魔法に精通しているだろうし、魔術師という人種からして、きっと気難しい人間に違いない。
そんな相手からの通信。
第一印象は大切だ、一歩間違えばいきなり全面戦争ともなりかねない。
まずい、いきなりそんな大事な交渉をしろと言われても、まだ心の準備が出来てない。
「マスター、相手をあんまりまた待たせるのも」
「そ、そうだ、すぐ行かねば」
ガタンと慌てて立ち上がった拍子に蹴倒した椅子が足に絡まり

ゴインッ

臑を打ってしまった、ものすごく痛い・・・
「・・・・マスター?」
ついでに使い魔の視線も、ものすごく痛い
「あのですねぇ、豪華な椅子に座って踏ん反り返るなんて慣れない事してるから、そんな目に遭うんですよ、もっと小市民らしく毎日オドオドと神経張り巡らせてないと、いつ寝首を掻かれるか、分かりませんよ」
「私は一体何者じゃいっ、余計な事はいい、他の魔術師からの通信だと?」
「はい」
「いきなりだな」
「マスターが作った街の少し離れた所に別の街があったでしょ?」
「ん、ああ、あったな、なんかゾンビが町ん中にボーと立っていて、他の奴らがそれを全然気にしてないっていうシュールな光景だったが」
「それ、たぶん守備隊ですね」
「うは、そんな町の露店で売ってる食い物なんぞ、食べたくないぞ、なにか細菌感染してそう」
「そんな事はどうでも良いんですよ、今は他の魔術師からの通信のほうが大事です」
「そうだった」
「マスターが自分のテリトリー内に進出して来たから様子見の通信だと思います」
「成る程、それで通信設備はどこにある?早速外交交渉といこうじゃないか」
使い魔と話しているうちに落ち着いてきた、そうだ今や私もいっぱしの魔術師。
外交交渉の一つや二つ簡単にこなしてやろうではないか。
使い魔に案内されたのは鏡が何枚も飾られている部屋だった。
「あのな、前から言ってるが、私はこんな鏡は何枚もいらないんだ、一枚あれば十分、こんなにあると何か落ち着かない」
「なに、言ってるんですかマスター、その鏡が通信装置ですよ、魔術師一人につき一枚、だから何枚もあるんです」
「そうだったのか!?」
「なんだと思ってたんですか」
「いや、こんな鏡を何枚も持ってるなんて、以前の自分はなんてナルシストだったんだと密かに頭を抱えていたんだが、そうか通信装置だったのか。」
一人納得していると使い魔のため息が聞こえてきた。
これ以上余計な事を言うと、さらに馬鹿にされそうなので気を取り直し。
「それで誰からだ」
「はい、どうやらデス魔法の使い手のラ・ジャという魔術師らしいです、通信を繋ぎますか?」
「ラジャー」
「・・・・・マスター、本人を前にして、絶対そんな事言わないで下さいね」
「わ、分かっている」
流石に今のは自分で言って恥ずかしかった。
「殺されますよ」
「分かってるって」
「僕に」
「お前にかいっ」
「当たり前じゃないですか、あんな事を言う人がマスターなんて他人に知られたら、僕恥ずかしくて死んじゃいます」
使い魔はちっちゃい手で顔を覆いイヤイヤをする。
「前から思ってたが、ほんとお前、使い魔らしくないな、もうちょっとマスターに従順にとか思わないのか?」
「マスターこそ、ほんとに魔術師か疑いたくなる時が多々あります、それを直してくれれば僕も態度を改めます」
使い魔はそう言ってつんと横を向いた。
(たとえ私が直しても、こいつの態度は直らんと思うが・・・・)
ふりふり振られている尻尾でも踏んでやろうかと考えているうちに、鏡に人の顔が現れた。
「 わが名はラ・ジャ、この大陸の支配者だ 」
「・・・・・・・」
なんか黒かった、眼が長方形で赤いし、それにあの王冠がまた・・・・
ぱっと見、懐かしのスーパーロボットに出てくる敵ロボットみたいな奴だった。
「あれは・・・人か?あんな真っ黒で、話してる時も黒いし、お歯黒でもしてるのか?」
流石に本人には聞こえないよう、こっそりと肩に乗っている使い魔と話す。
「そりゃあ、魔術師ですから・・・・」
「?」
「センス最悪(ぼそり)マスターと一緒で」
「小声でつぶやく個所がちがうっ」
「なにか?」
黒一面で赤い眼のようなものが光っているだけなので、表情は分からないが、恐らくは怪訝そうな顔してラ・ジャが尋ねて来る。
「いや、なんでもないこちらの事だ」
「我を前にして他の事に気を取られるとはな」
くっくっくっと咽の奥でラ・ジャが笑う、なにか陰湿そうな奴だ。
「舐められているのかな?」
「い、いや、そんな事は無い」
慌てて否定する。
ラ・ジャの声質が安定してない、高くなったり低くなったり、
どうにも苛立ちのようなものを感じる。
これはまずい。
まあ、確かに本人そっちのけで使い魔と話していれば、無視されていると思い、気分を害するのも致し方がないか。
「マスター、言葉には気をつけてください」
使い魔もそこは心得ているようで、今度は慎重になって顔を寄せて囁いて来る。
「ふむ」
寄せるのはいいが、使い魔の髭が耳にこしょこしょ当たってこそばゆい。
払いのけたいが、ラ・ジャがじっとこちらを見て、今度妙な動きしたらキレるぞという、危ない雰囲気を醸し出しているので身動きできない。
「あの魔術師、凄腕のネクロマンサーなんですから」
「は?何?あいつがなんだ?」
どうにも、使い魔の髭のこしょこしょが気になって、話がよく聞き取れない
「だから、凄いネクロマンサーなんですってば、ほらこのプロフィールにも書いてあります」
「は?凄い根暗マンさー 凄いなそれは、しかもプロフィールでも強調するなんて、何もそこまで自分を卑下しなくても」
「ちょ、なに言ってるんですかマスター、そんな見た目そのまんまの事を!?」

「貴様の下等な文明など、粉々にぶち壊した上にお前らゾンビにして、こき使ってやる、楽しみしておくことだな」

ぶちん

通信が切れた。

静まり返る鏡の間。
「あ、あーーーっ、お、おい、いきなりの絶交宣言だぞ」
「まあ、そうなるでしょね」
私は頭を抱えた、なんと言うことだ、初の外交デビューがろくに相手と話さず断交→全面戦争。これなら何も話さない方がましだった。
「くっ なんて、短気な奴なんだ 」
ほんの些細な聞き間違いだったのに、こちらの弁明も聞かずに言いたい事だけ言って、いきなり通信を切るなんて。
「そりゃ魔術師なんて元々偏屈な人が多いですし、デス魔法っていう点で、ちょっと感性が普通の人より違うってのは予想出来た筈ですよ、だから言葉に気をつけてって言ったのに」
「くそっ、まったく、私のように温厚で鷹揚な人格者はいないのか」
「なーに言ってんだが、このへっぽこ場当たりマスター」
「てめーっ、魔法鍋の具にすっぞ」
「ほら、魔術師って短気だ」
「・・・・・ 」
なにも言い返せなかった。

「ま、まあそれはともかくとして、ところでラ・ジャってどんな奴なんだ?まともに話が出来なかったから、まったく分からん、まあ神経質でキレ易いのは分かったんだが 」
「えーと、ここにプロフィールが」
使い魔が器用に手に持ったラ・ジャのプロフィールの書かれた紙を見る。
なんでこいつは先にそれを私に見せないんだろ、そうすれば私も心の準備が出来たのに。「ふむふむデス魔法9でカオス技能持ち、あと信条がリサイクル社会の実現だそうです」
「なに?リサイクル社会の実現?また随分と外見と使ってる魔法とのギャップが激しい信条だな」
「なになに、人間からアンデットへ、生きてる体はもう古い、今こそ二酸化炭素の出さないアンデットに、我が軍団は惑星温暖化防止に努めています・・・・・・だそうです」
「・・・・自然に優しいんだが厳しいんだが、判断に苦しむリサイクル社会だなそれは、いや、生き物だけ再利用して循環してない時点で自然には厳しいか」
「あ、あと、腐っても安心、ゾンビが君を待っている、歩く堆肥に君もなろう、目指そうエコ社会、こんな事も書いてあります」
それは奴のエゴ社会だろ・・・・。
「いや、もういい、それ以上聞いてると頭が痛くなってくる。まあとにかく共存はどうあっても無理だっていう事は分かった」
「そうですね」
「とにかく、本格的に敵勢力との戦いだ、初戦はとるぞ、その後の弾みになるからな」
「じゃあ、主力軍団を動かすんですね」
使い魔の真剣な顔。
「ああ、ブシャンを呼べ」
「本当にアレな人が率いるアレな軍団を人前に晒してしまうんですね」
嫌そうな顔の使い魔、って、おいっ
「人前に晒すってなんだ、晒すって」
「だってー、恥ずかしくないんですか?、アレがわが軍の顔だって思われて」
「アレって言うなっ、あいつら、戦闘力だけは凄いんだぞ、大陸の住民にわが軍の凄さを見せ付ける良い機会じゃないか」
「いやー、きっと戦闘力じゃない、何か見せちゃいけない別の凄いモノを見せ付けるだけになる気が・・・・。」
なんて失礼な事を言うんだ、こいつは頭に来る。
ほんと、こいつの言う通りなのが、また余計頭に来る。
「しかもそれが、大陸中に響き渡るんですよ?覚悟は出来てます?」
「やかましいっ、お前はいちいち変な解釈をするな!
 少しは黙ってYesマスターって言えないのか」
「そうしたらマスター、果てし無く馬鹿やるじゃないですか」
「黙れ黙れ黙れぃ、とにかくお前はそこで見ていろ」
余計な心配をする使い魔を黙らせ、ブシャン率いる主力バーサーカー軍団を出陣させる。
そして、こちらの橋頭堡の町でも攻略しようとしていたのか、平野を行軍していたラ・ジャの野戦軍と対峙した。
「む、どうやら、やつらも早速こちらの町を攻略しようとしてたようだな」
「みたいですね」
「いかがする、主殿よ」
敵の姿を認めたブシャンが尋ねてくる。
「無論殲滅だ、いいか、これがラ・ジャ軍との初戦だ、派手に・・・」
やってこいと言いかけたが、使い魔に止められた。
「マスター、ちょっと待って」
「なんだ?」
「普段あれだけいらん風に目立つのに、さらに派手にしろってのは・・・・」
「・・・・・・」
嫌な光景が頭に浮かんだ、派手な鳥の羽を孔雀のように体いっぱいにつけ、いつもの高笑いとともに、たった一人で無謀にも突撃していくブシャン・・・・。
頬に汗が伝う。
「うむ、お前の懸念ももっともだ」
使い魔に頷き、ブシャンに言う。
「ブシャン、兵の数も質もこちらが上、ここはただ一言、『勝て』だ」
「ふははははははははは、この高貴な我輩が率いているのだ、勝利などそれはもはや確定ごと、余人が目を剥くような戦い方を披露してやろう」
実に頼もしげなブシャンの言葉、どうか別の意味で目を剥くような結果になりませんようにと、祈らずにはいられなかった。

そしていざ始まった戦闘だが、戦闘前の不安とは裏腹に完全にこちらが敵軍を押していた。
グール、ゾンビを次々と潰していくバーサーカー達。
ラ・ジャ軍はバーサーカー達が開けた穴を埋められず、すでに陣形もバラバラとなっている。
「くっくっくっ、圧倒的じゃないか我が軍は
完全に味方が押しているので、戦闘の様子も組んだ手に顎を乗せ、余裕の観戦が出来る。
が、なぜか私の言葉を聞いた使い魔が目を丸くして驚いた顔をした。
「あ、マスター、駄目ですよ、それ駄目、死亡フラグです」
「は?なんだそりゃ」
使い魔が訳の分からない事を言い出した。
「それ言うと死が待ってます」
使い魔の目は真剣だった。だがそんな顔されても、この状況下では。
「ふっ、冗談はよせ」
「あーあ、それまで言っちゃうなんて、マスター最悪」
もう駄目だと使い魔は手で顔を覆う、はっきり言ってこいつの言っている意味が分からない、もしかしたらニュータイプと呼ばれる種族なら分かるかもしれない。
「馬鹿なことを言ってないで、見ろ、すでに我が軍の勝利だ」
「ふふふ、マスターも存外甘いようで」
何故か使い魔が不気味に笑った。
その笑顔に思わずぞわっとしたものが背筋に走る。一体なんだというのだ
「ま、まあ初戦を大勝利で飾ったんだ・・・・・って、あれ?」
気のせいか、なにかある筈のべきモノがそこに無いという、妙な感覚に襲われた。
「んん? わが軍何か数少なくないか?」
ひいふうみいと数を数えている私の横では、まだ使い魔が不気味な笑みを浮かべている。
「なんか妙に静かだし」
「ふふふふふ」
「だから、その笑みやめぃ!とにかく何か違和感を感じる、プジャンだ、指揮官のプジャンを呼べ!」
「死んでます」
「ぶっ!?」
ちょっと待て、なんだそれは!?
「マスターのせいで」
「はぁ?なんでよ!?」
「だってマスター死亡フラグを全部立てちゃうから」
使い魔は責める目付きでこちらを見るが、私には全く全然責任は無い・・・・よな?
いや、無い、無い筈だ
「 だから訳のわからん事を言うんじゃない、 プジャンの奴何で死んだんだ、というか、いつ死んだ?全然気がつかなかったぞ」
そうか、やけに静かだと思ったらあの高笑いがなかったせいか、納得納得・・・・している場合ではない。
「どうも敵の遠距離攻撃で一発必中、額を撃ち抜かれて死んだみたいですね、ほらマスターのせいだ」
「だからなんでよ!?」
「額ですよ、額、ほらこの死に方、マスターが立ててしまった死亡フラグのせい、
可哀想なプジャンさん」
しくしくと泣きまねをする使い魔。
さっきから使い魔との会話は意味不明で理解できないが、プジャンが戦死したのは間違い無いようだ。
何という事だ
「(プジャン)金づるが死んだら我が軍の(戦力)財布はどうなる!?」
「・・・・マスター本音と建前逆になってます」
「え?あ・・・・も、もとい、わが軍の大事な戦力であるプジャンが死ぬとは、くっ」
「すっごいワザとらしいです、ますたー」
「やかましいっ、くそっ、この先どうすんべ」
人が頭を抱えているのに、使い魔は『マスター、何故訛る・・・』などどどうでも良い事を言っている。
「お前、なにか良いアイデアはないか?」
溺れるマスターは使い魔の尻尾も掴むの格言・・・じゃないか、まあとにかく、なにか良い知恵は無いかと使い魔に訪ねるが
「うーん、それよりもですね、一つ不思議に思ってた事があるんですけど」
使い魔は何か別に気になることがあるようだった。
「なんだ?」
「だいたいマスター、なんで聖なる鎧とか、かけてあげないんです?確か完成させてましたよね」
そうだ、確かに私も大切な金づる、もとい戦力のプジャンをあっさり失う訳にもいかないので、補助魔法の一つもかけようとしたのだが。
「その筈なんだがなー、呪文書に無いんだよ」
頭を掻き掻き、棚から呪文書を取り出して開いてみる、そこには完成させた呪文一覧が載っているのだが、聖なる鎧を始め、完成させた筈の魔法のいくつかの名前が載ってない。
全く持ってミステリーだった。
「そんな馬鹿な」
言って、使い魔は身を乗り出して、差し出した呪文書を見る。
「馬鹿ってお前、ほれ見てみろ、スピリット召喚、ハイスピリット召喚、ナーガ召喚、ユニコーン召喚・・・・無いだろ?」
「・・・・・」
じっと呪文書を見て、黙りこくる使い魔。
しきりに首をひねる私。
「奇怪しいだろ?」
「可笑しいですね、マスター」
おい、なんか私の言葉とのニュアンスが微妙に違わないか。
「あははは、笑っちゃいます」
「待て、なんだその乾いた笑いは、私は真剣に悩んでいるんだぞ」
「マスター」
じと目の使い魔、なんか迫力があって思わず身を引いてしまう。
「な、なんだ?」
「ページって、捲れるもんだって知ってます?」
ぴくり、顔の筋肉が引きつったのが自分でも分かった。
「・・・・・・・」
嫌な汗が背筋を伝う。たしかに本のページは捲るもの、それくらいは知っている。
知ってるが、試そうとした(方向キーは押したが、それ以外のボタン押さなかった)事が無かったというか、なんというか忘れていたというか、考えてもいなかったというか・・・・
「も、もちろん」
知っている、当たり前だろhahaッhahaー。
と、言って朗らかに笑いたい、笑いたいが、ここで見栄を張って知ってるといえば、
やってみせろと言われるに決まっている。
だが、残念ながら今の私には、はっきり言って一発で正解を引き当てる自信は無い。
ここで間違って本を閉じて街画面に戻ったりしたら・・・・いやいや異界語はやめよう。
とにかく下手な見栄は身の破滅、だとすれば、ここは耐え難きを耐え、忍び難きを忍び・・・・いや、待て暫し、本当にそれで良いのか?
たかがページを捲るなどというこんな簡単な事、やり方教えて♪ なんて言おうものなら、主人としての沽券、というか人としての沽券に関わる。
「知りませんよね、絶対」
「ぐっ」
人が心の葛藤真っ最中だというのに、使い魔が情け容赦無く、畳みかけるように言ってくる。
「し、知らない」
完全に見透かされている、こうなると恥も外聞も無い。ここで知っていると言おうものなら、この先どんな厭味攻撃をされるか。
・・・・・いつも思うのだが、私は、本当にこいつの主人か?
最近なんか主人としての自信が・・・いやいや、全ては記憶喪失が悪い、無謀な挑戦をしたのが悪い、つまりは自分が全て悪い。
「あっはっは」
笑うしかなかった。
「なに笑ってるんですか?、真面目に聞かないと教えてあげませんよ」
「はい、ごめんなさい」
ますます気分が沈んでしまった。
「仕方ないですね」
はぁとため息をつきつつ、使い魔はそれでも懇切丁寧に呪文書のページのめくり方を教えてくれた。
「なんと、英雄復活というものがあるではないか」
「自分で完成させといて、それを言いますか、あなたは」
「ちょこっと忘れてただけだ」
「記憶喪失な上に健忘症じゃ・・・・いや、ひょっとしてマスター記憶喪失じゃなくて、記憶力喪失なんじゃ」
「失礼な事を言うなっ、誰がそこまで喪失するか!」
とにかく死んだプジャンを復活させるため呪文をとなえる。
しかし復活欄にはプジャンと共に見知らぬ名前も一つ。
「ん?なんだこのガンサーってのは」
「あ、ほんとだ、なんでしょう、この名前」
「うーん、思い出せん」
「記憶ないですねー」
どこからか、薄情者ー、フンガーという言葉が聞こえてきたような気がするが、気のせいだろう。私は忘れたそんな名前。
「まあ、いい、気にするのはやめよう、とにかくプジャン復活、ほい」
ぽわわんと煙があがりプジャンが復活した。
「ぬふははははははは、この高貴なるプジャンが指揮すればどのような軍勢も、くらえ我が必殺の弓矢っ、む?」
あっさりやられたんで、自分が死んだ事もわかってなかったようだ、まだ戦場にいるつもりのプジャンが私と使い魔を見て首を傾げた。
「何故そなたらがここにいる?」
「それがですね、プジャンさんが戦場でやられてしまったので、マスターが復活を・・・・」
使い魔が私の方を見て黙り込む。
「・・・・・」
私は無言。
「む?」
プジャンも首を傾げる

びよよよよん

何故か矢が何かに当たって、しなる音が響く。
何に当たったかって?

「やっぱり、マスターの死亡フラグだったんだ・・・・」

使い魔が手を合わした。
プジャンも決まり悪げにぽりぽり頬を掻いた。
言わなくてもお分かりでしょう、皆さま。

私は・・・・・・危うく一命はとりとめた(涙)、ほんとやばい所だった、
お花畑と、手招きしているガンサーの姿が見えた。

こうして多少のトラブルはあったが、初戦を(なんとか)大勝利で飾ったわが軍はその後の侵攻作戦に弾みをつける事が出来た・・・・・・・筈なんだが、なんだろ、この先に対する不安は。


不安な中で始まったラ・ジャ戦だったが、案に相違して快進撃は続いた。
次々と作り出されるバーサーカー軍団が怒濤の勢いで町を落としていく。
「マスター、維持費で赤字です、このままじゃ破産」
占領した町全てにパルテノン神殿や大聖堂を建設、沸き上がるマナ、戦場にて魔法が炸裂する。
「ブシャンさんすみません、今月もどうか寄付金よろしくお願いします、うう、経済感覚の無いマスターですみません」
立ち並ぶ研究施設、大魔法が次々と完成していく
「マスター、お願いですから治癒の言葉以外使ってください、え?効果がよく分からない?・・・・・・マスター、本当に魔術師?」

「わはははは、凄いじゃないか我が軍団」
「あはははは、凄いじゃないですかマスター、ほんとサイテー」
「なんだとっ!?」
「まさかマスター、自分が役に立ってるという自覚持ってるんじゃないでしょうね?」
「なにを言うか、私には呪文をリサーチするという大切な役目があるだろう」
「でもリサーチするだけで使ってないし」
「使ってるだろう、治癒の言葉とか治癒の言葉とか治癒の言葉とか」
「はぁ〜、マスターえらいえらい」
「お前、完全に馬鹿にしてるだろう」
「うう、僕がどれだけ色々なやりくりに苦労しているか」
頭をぐりぐりしてやろうかと思ったが、しくしく使い魔が泣き始めたので気が削がれてしまった。
なんだその放蕩亭主を持って苦労する妻みたいな態度は。
「お可哀相な使い魔様、無体なマスターを持ってご苦労なされて・・・」
だからメイドーず、こういう時にだけ出てくるんじゃない、それと発言は私の前でしてくれ、柱の影から涙まじりに言うな。いくら温厚な私でもちゃぶ台ひっくり返してキレるぞ。
い、いかん、それではどこぞの懐かしの根性野球アニメの一場面のようではないか。

などという障害もあったが、出血大サービス、在庫一掃総ざらいで大売出し、もってけドロボー、一山いくら
「あたかも駄目すぎる社長が会社潰して、やけくその資産整理セール大放出の如くにバーサーカー部隊を作り出し、戦線へ投入、」
我が軍団の赤い波は、多少のゾンビやグールなどものともせずに、ラ・ジャの都市を飲み込んでいった。
あれ?なにか間に使い魔のひっかかる言葉が入った気がするが・・・・・
まあ気のせいか。 
とにかく、ラ・ジャの辺境地域にあった都市を制圧すると。
首都へ向けて軍団の侵攻を開始させた。
「しかし、なんだかなぁ、やつらゾンビとかグールとかばっかじゃないか」
使い魔と一緒に戦場の様子を見ているのだが、ゾンビやグールがわらわら湧き出てはわが軍の精鋭バーサーカーに蹴散らされている。
「まあ、デス魔法の使い手ですからね、それに心理効果も狙ってるんじゃないですか?」
「成程、この異様なアンデット軍団の醸し出す障気によって敵の指揮官の戦意を削ぎ、兵には恐怖を与えるか・・・・。
「ふははははははは、全ては我輩に任せるがいい、蹴散らしてくれよう」
「がああああああっ」
だが、我が軍の指揮官と兵は実に楽しそうに闘っている・・・。
「敵、完全に作戦間違えてるよな」
「僕たちの軍との相性最悪ですね、ラ・ジャ軍」
当たるを幸い、ちぎっては投げちぎっては投げ。
ちぎられた手がもぞもぞ動き、はみ出た中身に、ウッと、口を抑えたくなる光景も
「脆い脆過ぎるぞきさまら、ちゃんとカルシウムは摂っておるのか、骨が強くならんぞっ」
我等が指揮官は平気らしい。
「ブシャンの奴ゾンビ相手になに言ってるんだ」
「さあ」
「偏食はいかんぞ偏食は、なんでもよく食べ、そして適度な運動、それが健康の源っ、 その点、貴様は良し!」
「だから、なんでそれをグールに言っているんだ、あいつは」
「ひょっとしてあの人、人間とアンデットの区別ついてないんじゃ」
「あんですっと!?」
「マスターさいてー」
「悪かったな」
「ふははははははは、 我輩のため蹴散らされがいのある頑強な体を作って来るがいい」
「・・・・・・もう一人、英雄欲しいよなぁ」
「そうですねー」
私と使い魔はしみじみ言い合った。

こうして敵の首都に迫りつつある我が軍であったが、問題が生じた。
「ふむ、前線の新兵達の神経症か」
「はい、特にブシャンさんの担当している戦域で」
また、あいつかと思わなくもないが、奴には主力の精鋭バーサーカー軍団を任せ、侵攻の要として常に戦ってもらっている為、無理もさせている。
ブシャンの居るところ即ち激戦地なのだがら、新兵達には荷が重すぎるのかもしれない。
とはいえ、戦場は常に新鮮な血液を欲しているので兵の補充を欠かすことは出来ないし、送る兵全てを精鋭兵で固めるという事も不可能だ、主力の敵首都侵攻を助ける為にも、他の戦域でも戦っているし、そこでも精鋭兵は必要とされているのだ。
「ふーむ、やはり新兵らは激戦区の戦場の緊張感に耐えきれないか、なにせ、相手が相手だし」
そう、相手は死体のリサイクル業者なのだ。
昨日同じ釜の飯を食った味方が、次の日にはアンデットになって襲いかかってくる、そしてそれは明日の自分かもしれない。そんな極限状態に置かれる兵士達。
ブシャンとその愉快な仲間達ならともかく、他の種族のまともな神経を持つ兵達には酷かもしれない。
「いえ、四六始終鳴り響く、ブシャンさんの高笑いが耳にこびり付いて、夜も眠れないとか」

ガンッ

机に思いっきり頭をぶつけてしまった。
「あの笑いが聞こえなくなるなら、アンデットになったほうがマシ・・・・などという悲痛な叫びも」
「・・・・・・・・」
「どうしましょうか?」
「英雄だ・・・・・・」
机に突っ伏したままで、言う。
「はい?」
「直ちに新たな英雄を招集しろ、今すぐにっ」
「は、はい」
顔を上げた私のあまりの血相に使い魔は慌てて出て言った。

「と、いうわけで、新たな英雄の方を見つけてきました」
「良くやった、偉いお前、明日は高級ネコ缶をやろうっ」
使い魔の手際の良さを褒めてやったのに、当の本人は嫌な顔をする。
「僕、ネコ缶なんて食べないです。」
「そうなのか?」
そう言えば、こいつ、いつも何食べてるんだろうか、一緒に食事なんてしないし。
そう、私はいつも一人寂しく食事をしている。
「じゃあ、何食べるんだ?」
「そりゃ、メイドさん達が作って、食べさせ・・・・あ、いえ、出されたものなら何でも」
私が俯いて肩を震わせているのに気が付いた使い魔は殊勝を装うが、誤魔化されない。
こいつ、主人を差し置いて、そんな特権を行使してやがるのか、どうりで一緒に食事をとりたがらない筈だ。
「そ、それはどうでもいいじゃないですか、とにかく新しい英雄の方が来てくれたんですよ」
そうだ、この際細かい事はどうでもいい、そう、いつも私が一人寂しく食事をしているのなど、どうでも良い事だ。
魔術師は一人が似合う、この前、偶には賑やかな食事が恋しくなって、バーバリアン共と食事を共にしたら、あいつら食ったもん勝ちの世界で生きてるから、主人への遠慮もへったくれもなく人の分まで食いやがった。
いやいや、とにかくどうでもいい事だ。今は新しい英雄の事だ。

「新しい英雄のヤラナさんです」
部屋に通されたのは妙齢の女性、細剣も使う魔法剣士だそうだが、どうやら吟遊詩人でもあるらしくそこはかとない気品を漂わせている。
「いや、よくぞまいられた、貴女のような方が来られて、光栄に思う」
髪を軽くかき上げていたヤラナに向かい、手を差し伸べる、採用の可否は言うまでもない。
それを見たヤラナも手をあげ、そして口に持っていった。
「?」
「おーほほほほほほ、それは当然の事ですわ、わたくしがこの軍に入って差し上げるのですから」
「・・・・・」
差し伸べた手はどこにも持っていきようがなく、とりあえず握ったり閉じたり。
「どこで拾ってきた、この英雄」
使い魔の方に振り向く。
「あー」
私の問いに、使い魔が言いづらそうにして
「その、戦場で」
「戦場?」
目の付け所は悪くない。戦場で活躍した奴をヘッドハンティングというのは即戦力の獲得という点では合理的だ。
「ブシャンさんの居る戦場で」
その言葉で一気に不安になった。
「あはははは、ブシャンさんを称える詩を作ってる不思議な英雄が居るって聞いたもんで、連れてきちゃいました」
「連れてくるんじゃないっっっっ、そんな英雄」
「だって、英雄なんてそこらにほいほい転がっているものじゃないんですよ、情報があったら、ガセかも知れないけど一応確認はとるじゃないですか、ほんとに居たし」
「ああ、ああ、そうなんだろうさ、お前は間違ってないと思うよ、情報収集に関しては」
「でしょ?」
使い魔はうんうんと頷く。
「だけどな、私は即戦力になる英雄が欲しいんだ、誰が不思議英雄を連れて来いと言ったっっっっ」
逃げようとした使い魔を逃がさず掴んで、上下に揺する。
「あわわわわわ、落ち着いてくださいマスター」
「やかましい、お前はこのままシェイキングの刑だ」
「ああ、本当に残念ですわ」
乞われて、わざわざやって来た自分を無視して話しをしている私達を見て、ヤラナは落胆の声をあげる。
ああこれで、『呆れましたわ、このわたくしを無視するなんて、こんな所には仕官できませんわ』とでも言うのだろうか。
ちょっぴり期待してしまった。

「あの高貴なブシャン殿の事を少しも理解されていない方が、主であるなんて」
おひ、そう来るのかい
「どんな困難な状況であっても高笑いをあげて、なんなく切り抜けるあの余裕、凡俗達のつまらぬ讒言なども全く気にとめないあの度量、聞けば、平凡で凡庸で凡俗極まりない、まるで頼りにならない主に真の高貴さを教える為にこの軍に留まって居るとか、その気高い志、なのに主は全くその事に気が付いていない、嘆かわしい事ですわ」
卒倒しそうになった。
なぜ我が軍にはこんな英雄しか来ないんだろ。
「類は友を呼んでいるんじゃ・・・」

ギンッ

私の殺気を込めた目付きに使い魔は慌てて言い直した。
「ブシャンさんのですよ、ブシャンさんの」
「だろうな」
「だからわたくしも些少ながらお手伝いして差し上げましょう」
ヤラナはにこりと笑う。
ヤラナの中では既に採用は決定事項になっていた。
いや、確かに私も最初はそのつもりだった。
だが、こうなると本当に採用してしまって良いのか?
「あいつの、特殊能力はなんだ?」
「主導力と、術者能力ですね」
「・・・・・」
「主導力は味方を強くして、術者能力はマナを消費せずになんとマスターのかわりに魔法を唱えてくれるんでですよ、凄いですねー」
使い魔は私の殺気を宥めようと、必死にエレナを持ち上げる。
「高貴は無いんだな?」
「は?」
「高貴は持ってな・い・ん・だ・な」
「は、はいっ」
私の言いたい事を察して、使い魔は勢いよく頷く。
「う、うむ、なら採用・・・」
決定という言葉がどうしても咽にひっかかる。
ちらっと見る、エレナはこちらを見てたたずんでいる。
一見すると普通だ、いやちょっとだけ高慢というかそんな感じも受けなくなもないが、まあ、そんな感じがありそうとぐらいのレベルだ。
意を決する。このままブシャンのワンマンショーを続けさせる訳にはいかない。
「分かりました、貴女のお力添えをお願いします」
「おっほほほほほ、わたくしにお任せして良くってよ」

こうして、わが軍は新たな英雄ヤラナをゲットした。
妙齢の女性英雄が参加した事で、価値を理解してないバーサーカーらはともかく他の兵達の士気は向上した。
これで戦場神経症ならぬ、ブシャン神経症も少しは減るだろう。

「ではゆくぞ、皆の者ついて来るがよい」
「そうですわ、臆する事など何もありませんわ」
「我が輩が」
「わたくしが」
「「率いてるいるのだから(ですから)」」
「ふはははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「おーーっほはははははははははははははははははははははははほほほほほほほ」

「ぐあああああっ、ステレオになったぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

威力が二乗倍になった。

「どうしてくれるんだ、使い魔よっ!」
「採用したのマスターじゃないですかっ!」
その後、城では使い魔を上下に揺する私と、そんな私に猫キックを食らわす使い魔との争いを、柱の影からメイドーずが見守っているという異様な光景が見られた。

こんな調子でありながらも、いよいよラ・ジャ軍との首都決戦の時がやってきた。
「うわー、スケルトン、ゾンビ、グール、の御三家そろい踏みですよ」
「流石のラ・ジャも在庫一掃セールだな」
「囓って、残って、削ぎそぎ落とされて、最後まで使い切ろうっていうリサイクル社会ですね。」
「だから、奴のをリサイクルって言うのは止めろ、あいつら強引にアンデットにして利用しているだけだろう」
「まあ、増殖させるために無理矢理してるだけですよね」
「そうだ、大体だな、いくら兵士といっても花を愛でる余裕すら無い軍は駄目だ、そんな荒んだ軍にあるのは破滅だけだ」
「マスター、どうしたんですか?いきなり似合わない事を?」
「似合わなくない、みろ、やつらの腐れっぷりに、草花がどんどん萎れて行くではないか」
「まあ、精気を吸う方側ですからね」
「いくら魔術師の軍といってもあれはいかん、我々は戦後の事も考えなければ成らないのだ」
「おー」
使い魔が感心したような声を上げる。
「ふふん、わたしも一応ライフの魔法の使い手だからな、常々無駄な破壊は慎み、たとえ野の花といえでも無造作に踏み荒らしていけないと、訓令しているのだ、」
「あ、本当だバーサーカーが花の匂い嗅いでる」
「ふはははは、見るがいい、わたしの教育の賜物を」

ぶちっ、もしゃもしゃ

「食べ始めましたけど」
「・・・・・・・・・」

がふかぶ(コレ、クエル、ウマウマ)
ごふー (オマエ、モノシリ、オレ、ソンケイ) 
ごあーー(オレ、クウ、ゼンブ、ノコサナイ)

「あれも花を愛でてる?のかなぁ、ある意味」
「・・・・・・」

さっそく魔法陣移動でばぴゅんと飛んでいく。

「あんた達っ、いつもいつ言ってるでしょ拾い食いは駄目だって、ちゃんと三度三度の食事はは上げてるっていうのに、なんていやし子達なんだろ」
ビシビシ
ふがふがー、ごががー
わたしの迫力に恐れをなしたのか、バーサーカーらは追い散らされていく。
「なんでおかん言葉」
「ぜいぜい」
マスターって興奮すると言葉使い変になりますよね
「そんだらこっと、ありゃしやせんがな」
「はぁ、マスターはいっつも余計な事ばかり考えて、失敗してるんですから、
 本業の魔術師業に専念したらどうです?」
「魔術師の本業って、あの陰気な作業場で、なんかの目玉やら尻尾やらどろどろした得体のしれない物体]を魔法鍋で煮込んだり、ひたすら黴臭い呪文書の解読や、失敗すると結果が悲惨な状況を生み出す実験の日々だろ?なんかなぁ、あんな事ばかりしてると性格が歪んでしまいそうでな」
「そこは職業病だと思って我慢しないと」
「でもなぁ、その果てがあのラ・ジャかと思うと・・・・」
「あとブシャンさん方面?」
私と使い魔は顔を見合わせ、お互いため息をついた。
「僕、頑張ってフォローしますから、あそこまではイかないでくださいよ」
「あ、ああ、気をつける」

などという会話をしている間にも敵首都の攻城戦は始まっていた。
後の無いラ・ジャ軍の攻撃は激しいものだったが。
「どうも、やつらの軍は戦力不足という感じだな」
城平は必死に防戦しているのだが、バーサーカーらが城壁に取り付き、城門も今に破られそうになっている
「どうやら、ラ・ジャ軍は僕たちの軍以外にも別の魔術師と戦っていたみたいですよ」
「そうだったのか」
「ええ」
「ふむ、やつらわれわれに背を向けた戦いをしていたのか」
「ええ、そこを忍び足でやって来た僕達が、後ろから問答無用でぽかり、本当は一時的にでも手を結んでおきたかっと思うってたんでしょうけど、マスターの外交技術でぶちキレてそれも成らず、引く引けない状況に追い込まれての苦渋の二正面作戦という所でしょうか」
「・・・・・・なにか、私が物凄く卑怯な奴に聞こえてるんだが」
「何言ってるんですか、褒めているんですよ、いやー天然って本当に怖いですね」
「褒めて無いだろ、お前、」
「えー」
「奴は油断したのだ、我が軍など二正面作戦でも十分対応可能と侮ったのだ、
そう、わが軍の実力を過小評価したのだ」
「そりゃ、初戦でいきなり笑いながらやってきた指揮官が遠距離攻撃であっさりやられるは、マスターは馬鹿の一つ覚え治療の言葉ばっかで補助魔法かけないんじゃ、油断もします、マスター見事な作戦ですね」
「お前、最後に褒めれば良いってもんじゃないぞっ!」
使い魔の襟首つまんで、びんたでも食らわしてやろうかと思ったが

「あ、マスター、城門が開きました」

「なに?」
使い魔のその一言で止めた。
「むう、哀れなものだな、あんな三角帽子かぶって、ごつい鋸持った奴に、
って、なんであいつら上半身裸?」
「さあ、それは本人の趣味だろうですけど、油断すればマスターもああなるんですよ」
「うむ肝に命じていこう」
こうしてわが軍はラ・ジャ軍を下したのだった。
ムクドリ
2008年04月27日(日) 14時36分20秒 公開
■この作品の著作権はムクドリさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
当リプレイ記は一部(特にキャラクターの性格づけに関して)過剰な表現を用いており、皆様方のキャラクターに対してのイメージに関して、一切干渉を与えるものではありません・・・・・・というか、ああ、石を投げないで。

この作品の感想をお寄せください。
え〜っと^^;あの呪文書って端がめくれてて、特に説明書とかなくても…なような気がするんですけど^^; 10 月読 ■2008-07-30 00:18:45
いいよいいよー。 10 あむぁい ■2008-06-25 22:51:10
ガンダムネタかよw 10 シムシム ■2008-06-03 12:23:09
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