記憶喪失マスター ホルス奮戦記 その5 〜そうだミロールへ行こう、第二の敵、その名も厚きカリー惨状〜
「マスター、ブシャンさんが塔を制圧したそうです」
ラ・ジャを下し、残敵掃討戦を任せていたブシャンから報告がありましたと、使い魔が私に言う。



そこは別世界ミロールへの道を開く魔法の通路である。
その塔を守るモンスターは手ごわく、こちらも少なからず被害がでた様だが、なんとか制圧に成功したらしい。
「良くやった」
「これでミロールへ行けますね」
「うむ、これで強力な種族やアダマンナイトがざっくざっくで、うっはうは♪」
ノードから採取できるマナもこちらの大陸の二倍で、絞り放題っ。
「さあいかんミロールへ」
「どうやって?」
「・・・・・塔を通って」
「部隊、駐留したままですけど」
「・・・・なんで?」
「僕に聞かれても」
「塔の使い方知らないのか?」
「うん♪」
「可愛く言っても駄目!」
「なんで知らないんだ、いつも人を小馬鹿にして、どっちが主人が魔法鍋で煮込んで教えてやろうかと思わせてるくせに」
「いつもそんな事思ってたんですね、知ってても教えたくないなー」
「いや、今のは言葉のあやだ、いつもそんな事は思ってないぞ」
「代わりに毛を毟って丸坊主にしてやるとか思ってるとか」
ぎくっ、
「す、鋭い・・・い、いや、気にし過ぎだ、」
「とにかく本当に知らないのか?」
「知りません」
「なんでよ、お前いろんな異界語でいうところのいんたーねっとで検索して調べてたんじゃなかったのか?」
「それが、塔でこっちとあっちを出入りするってのは分かったんですけど、裏世界って選択しても真っ暗なまま、それからどうするかまでは・・・・」
「なんでだ、なんで肝心な事を」
「肝心というか、どちらかと言うと、あまりに当たり前な事すぎて誰も説明つけてないっていう感じで」
「(説明書なっしんぐな)私には当たり前でもなんでもないぞ 」
「うーん、困りましたね」、
まずい、これでは他の魔術師との差が開く一方。
「ぐぐぐぐぐ・・・そうだ、スピリットだ、ノードのようにスピリットを融合させるのだ」
「そうなんですか?」
「きっと、そうだ、へい、かもんっ、スピリット」
「うわっ、超テキトーな呪文」
「やかましい、急いでいるんだ」

ぼわわん

「はーい、呼ばれて飛びでて、ぢゃぢゃ」
「だから、急いでいるんだ!余計な事はいい、さっさと行けっ」

すかっ、ごいん

しまったこいつ実体なかった、爪先が爪先が魔法壷に当たって痛い・・・
「マスター、本当ににおばか」

つかい魔がちっちゃい手を額にあてて首をふっているのを涙目の端でとめつつ
スピリットに命じる
すぐさま塔へと急行せよ

「はーい」

ふよよよ〜ん

「到着しましたー」

「よし融合っ」

ふわふわふわふわ

「出来ませんね、浮いてるだけです」
「なんだとっ」
「どうやら違うみたいですね」
ぐぐぐぐく、ならどうすれば、このまま主力のバーサーカー軍団を置いておくままというのも、戦力の無駄遣いだ、まだこちらの大陸での戦いは続いているのだ、なにか、なにか手を打たねば。
「あ!?」
と、使い魔が声をあげる
「なんだ!?どうした?、なにか変化があったのか」
「暇になった、バーサーカーが塔をがじがじ齧ってます」
「かじらすなーっ、お前ら一体それをなんだと思ってるんだ」
通信用の鏡に向かって怒鳴ると
「でっけーちくわ」
「ぶっ!」
「だ、そうです」
がうがう言ってるバーサーカの言葉を使い魔が妙に真面目な顔をして翻訳した。
「どこをどう見ればあれがちくわに見える」
「なんか丸くて細長いからだそうです、それに暇だし腹減ったとも」
「ええーい、なにを考えてるんだ奴らは」
「今度、土管をでっかいうまい棒って言って与えてみますか?食べるかどうか賭けます?」
「やかましいやかましいやかましい、そんな事している暇あるか、くそ、こうなったら仕方がない、直接私が乗り込むしかない、付いて来い使い魔よ」
「え、あ、はい」

転送の術を使い、塔へと急行、いまだ齧ってるいるバーサーカーが居たので、尻を蹴り上げて文字通り蹴散らし。
そんでもって、怒って齧りかかってきたバーサーカーから逃げまどい、余計な時間を費やして、なんとか塔の入り口までやって来た、ちなみに襲いかかって来たバーサーカーは、ブシャンが追い払ってくれた、くそ、これでまた奴に頭が上がらなくなる。

「それでどうするんですか?」
「うむ」
疑い顔の使い魔に重々しく頷く、尻に歯形がついたままだから、せめて顔だけでも締まらせないと、場が締まらない。
尻の歯形が誰の者かは主人の沽券に関わるので秘密だ、この場に居た者にはバレバレだが、全員に箝口令を強いた。
役一名じと目でこちらを見ている奴がしゃべりそうで不安だが
「ふはははは、中々面白い見せ物であった」
さらに一名、人の話をまったく聞かない奴も不安だが
「がうがう、がおがおー」
そもそも箝口令などという難しい言葉の意味が理解できているか不安になるバーサーカー共も・・・全員が不安だ、もしかしなくても、自分、ものごっつ無駄な事したんじゃないか?
い、いかん、さっきから時間を無駄にしまくっている。
「とにかく儀式を行う」
「儀式?」
「うむ、異世界へと転送というぐらいだ、なんらかの事をしなければならない筈、となれば儀式だ」
「おお、なにかマスターに珍しく知性の光が見える」
「お前、ほんと〜に、失礼だな」
「褒めたんですよ、素直に喜んでくださいよ」
「すぐオチをつける、お前の褒めは安心できん」
「それはマスターが直後に馬鹿な事ばっかするから」
「やかましいっ、おまえ馬鹿を二回も言ったな」
「ほら、すぐそんなオヤジギャグ言う」
「言っとらんわいっ」

ちゃりん

いくつかの金貨が足元に落ちる
「?」
「なんでしょう?」
使い魔と二人して不思議そうに顔を見合わせたあと、横をみると
「良い見せ物だ、おひねりをやろう」
ブシャンが満足げにうなづいていた。
「誰が芸をしとるかっ、誰がっ、わたしはマジでやってるんだよ、馬鹿にするんじゃない!」
「そうですよッ、マスターと同レベルで見られたなんて、僕、恥ずかしくて死んじゃいます」
「怒る所が違うだろ!」
両手で顔を隠してイヤイヤしている使い魔の頭をはたこうとしたが、するりと交わされる。
「がうがう がはっはっは」
バーサーカー達にまで笑われた。
さっきからちっとも全く話が進まない、このまま時間を無駄にしていたら、下手したら時間切れ支配の魔法が飛んで来る。
いや、まあ、そこまでここで馬鹿な事をしているつもりはないのだが、とにかく話を進めねば。
「では、やるぞ、わが村に伝わる伝統の儀式っ」
全員に余計な事を言わせないよう、びしりと塔を指さし、宣言すると
皆は期待のこもった眼差しで私を見る、あの使い魔までもが、だ。
ちょっと気分が良い
「こんどはどんな芸をするのだ?」
「マスターの突飛な行動については予測不可能な所がありますからねー、でも、きっとやってくれますよ、わくわく」
「がふがふ、」
「おまえら、なんの期待をしとるかぁぁぁぁぁ !!」
「だいたいマスターの村って所で、そういう期待しかできないというか」
使い魔がやれやれと肩をすくめる。ちっこいくせにやけに器用な奴。
「馬鹿にするな、この儀式は天候すらも自在にあやつるという、大魔法に匹敵するものなのだぞ」
「それって、ただの雨乞いって言うんじゃ・・・・(汗)」
ぼそぼそ言ってる使い魔を無視し、儀式を厳かに遂行する。
「はぁーーーー」
気合十分、気力は体に満ち満ちている。
「ほいっ、はんにゃはら、ほんにゃはら、ふんにゃはら、ひっひらひー!!」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

体全体を激しく動かし、全身全霊を込めた祝詞を唱える、神々しいまでの私のこの姿。
皆は見入って声もでない

「はいっっっ!!! どうか、開いてちゃぶだいっっ!!!」

両手と右足を塔に向けて膝を曲げた左足のみで体をささえる、決めのポーズ
儀式は完璧だった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

みな、固唾を飲んで私を見ている。
私も塔に何か変化が無いかとじっと見ているが
左足がつら・・・いや、変化がない

「・・・・・マスター?」

恐る恐るという感じで使い魔が声をかけてくる、ここに至ってまだ変化が無いということは、無念ではあるが認めざるをえない

「分かっている、みなまで言うな」
「いや、多分マスター僕の言いたい事、全然分かってないと思う」

哀れみすら漂わせた使い魔の顔。
お前ら、そんな目で私を見るんじゃない、落胆は分かる、わたしも若干している。
これでもうミロールへの道は完全に閉ざされたとお前らは思っているだろう。

「いや分かる、お前らの落胆と悲しみは、」
「あ、分かってたんだ、あと哀れみも付け加えてください」
ふむ、生意気な奴らだ、まあ多少の失敗はあったのだ、そう思われても致し方が無い所もあるかもしれない。

だが、しかし!

目をクワっと開け、皆を睨むと、ざざっと引いた
ふっ、たわいもない。
使い魔のやつ奴め、『つ、ついに・・・ 』などと呟き、恐れの表情を顔に浮かべている。
「使い魔よ、お前も漸く私の真の恐ろしさに気がついたようだな」
「ええ、それはもう十分に、心の底まで」
使い魔はぶんぶん顔を縦にふる。
そうかそうか、これで奴も従順な本当の意味での使い魔となるだろう。
だが、このまま皆を恐れさせてばかりでいても話は進まない、この塔を開放せねばならないのだ、一見手詰まりに見えるこの状況、しかし、私のこの明晰な頭脳はある一つの解答を導き出している。
「私はな、お前らとはここのデキが違うのだ、デキが」
自分の頭をツンツンと突つきながら、ニヤリと自信に満ち溢れた顔を皆に向ける。
「そりゃあ、同じにされちゃーね、みんな困っちゃいますよ、
あと神経も付け加えてください」
使い魔の言葉に皆が一様にうなづく。
自分達の至らなさを素直に認めるとは謙虚な奴らだ。
「失敗の理由、それは」
「それは?」
ごくりと使い魔が唾を飲み込む。
ブシャンの奴までが神妙な顔をしている。
「はっきり言って、パワーが足りないのだ、パワーが、そう皆でこの儀式でやらなければ ならないのだ!」
「うそっ!?」
「なんだと!?」
「がおおおんん!?」
あっという間に騒めきいっぱい、動揺どっさり。
「お前ら何をそんなに驚いている?」
「だってあれを僕達がやるんですか?アレなあれを」
「当たり前だ」
「人前で!?」
「独りで部屋に籠もってやってたら変だろ」
「いや、存在そのものが変というかなんと言うか、どっちかと言うとマスター一人の趣味に留めておいて欲しいんですけど」
「趣味にしてどうする、趣味にして、さあ、皆の者、気合を込めて儀式を行おう!」
逃げ出そうとする所を、尻尾を踏んづけて捕まえ、じたばたする使い魔をつり上げながら他の者に言ったのだが。
「いや待て、ちょっと待て、話せば分かる」
ブシャンが妙な事を言い出す。
「そうですよ、離してください」
「分かった、ブシャンと話そう」
「マスター、やっぱり頭の線が・・・・」
無駄と分かったのか、使い魔の抵抗が止んだ。
「だいたいだ、何故、高貴たる我輩がだ、なんであんな変態タコ踊りなんぞせねばならんのだ? お主、やはり正気を失ったか?」
待て、なんだその突っ込み所いっぱいの台詞は
「なんだと?タコ?正気?お前は何を言っているんだ?」
「お主こそ、何を言っている、と言うか、何をしているのだ、悩んでいたかと思ったら突然儀式とか言って訳の分からぬ事をしでかしおって」
「いや、そもそも何をしているのか、分かっているのかどうかさえ微妙」
ぶらぶらされている状態にありながら、失礼な事を言い出す使い魔
こいつこのまま大車輪して、太陽に向かってレッツゴーさせてやろうか。
「私はこの塔の力を開放させようとしているのだ」
「塔より先にマスターの頭が全壊に開放されちゃいましたよ」
しくしく泣き始める使い魔。
ええい、こいつこのまま魔法鍋の具にしてやろうか。
「失礼な事を言うな、私は正気だ!」
「その言葉が一番危ないんですよ、アレな人が言う言葉で」
「おまえ、本気で魔法鍋の具にすっぞ」
「もう、どうにでもして、なんでマスターこんなんに・・・」
しくしく泣き続ける使い魔。
言っている事は目茶苦茶失礼だが、こうもしおらしくなると流石に今までの長い付き合いから、哀れみも催してくる。
「そんなに変な踊りか?」
逆さまになっている使い魔を元にもどしてやり、目線まであげ尋ねると
「変」
一言で言い切られた。
「ものすごい変」
しかも繰り返された。
「ぐ、しかしこれはわたしの村の伝統的な儀式で・・・」
「マスター肝心な事は覚えてないのに、なんでそんな変な知識ばっかり覚えているんです?」
ぐぐぐぐ・・・猫と狐を合わせた使い魔に涙まじりの眼で切々に訴えられると、
ちょっとだけそうかなーと思ってしまう
「マスター、いつものマスターにもどってくださいよー、ちょっと間抜けでも、素直で優しい、いつものマスターに」
あれ、こいつこんな可愛いかったけ? 目はくりっとしていて、尻尾はふさふさで
耳はぴょこぴょこして、い、いかん、頭の中身が萌え出してしまいそうだ。
「お主、使い魔に魅了の呪眼つかわれとるぞ」
「ちっ、ばれたか」
「おのれはーーーーーーーーっっ!!」
思わず使い魔を放り投げ、投げられた使い魔はくるりと身軽に宙返りし、ちょこんと着地した。
「あーあ、あともう少しだったのに、ブシャンさん酷いですよ」
「いや、なんか、この作品に合わない萌えが発動しかかって、こう、うなじの毛がぞわっと来てな、すまんすまん」
あ、危うい所だった、なんかあいつが擬人化して見えてきた所だった。
全部魅了の呪眼のせいだったのか
つーか、そんなの使えたのかあいつ。
「でも、マスター、言っときますけど、あの儀式ってのは効果ないですよ」
「なんでそんな事が分かる」
「なんでって・・・分からない方が、どうかしてると思いますけど」
私を除いた全員がうんうんとうなづいた。
そこまで否定されるとなにか自信がなくなってくる。
「じゃあ、どうしろっていうんだ、このまま別世界のミロール行きは無しか?」
「案外、塔の中でミロールへ行きたいって言えばいけたりして」
「んな、馬鹿なって、あれ?使い魔?どこいった?」
今まで話してた使い魔が居なくなっている
しかもなんか塔の上のほうが光ってる。
「ふむ、これは」
「待てブシャン、まだ言うな」
「む?何故だ?」
「まだ心の整理がついていない」
「ふむ、では深呼吸でもしたらどうだ?」
「そうしよう」
どこまでもつづく澄み渡った大空を見上げ両手を大きく振って、
「吸って〜 はいて〜 吸って〜 はいて〜 吸って〜」

がぼっ

「マスター、ミロール行けましたよー、って、あれなんかの穴に足突っ込んだ?」
「げぼげほげほ、ひっくしゅん」
使い魔の奴、突然空から戻ってきて人の口に足つっこんで、しかもしっぽで鼻をくすぐり
やがった。
「大丈夫ですか?マスター?」
「びっくしゅん、げほ げほげほ びっくしゅん、こ、これが大丈夫に、み、見えるのか」
「あ、安心してください、う○こ踏んでませんから」
「踏んでたら、おまえは魔法鍋行きだ」
「代わりに、ゾンビ踏んじゃったんですけどね」
「ゲロゲロゲロゲロゲーー」
「なんと、向こうにそんなものが居るのか」
「はい、居ましたよ」
「では、入ってすぐ戦闘だな」
「ですね」
「では、部隊編成を」
「お前ら平然と会話しているなっ、少しは私の心配をしろっ」
使い魔とプジャンに食ってかかると、使い魔はしれっとした顔をして
「だって、マスターそれくらいじゃ死なないだろうし、」
「うむ、我輩では耐えられぬが、お主のその雑種のしぶとさがあれば耐えられよう」
「もういい、お前らと話していると力が抜けて来る」
膝をつき、がっくり肩をおとした私の肩を使い魔がぽんぽんと叩く
「でもまあ、ミロールへの行き方が分かって良かったじゃないですか」
「まあな」
「盲点でしたね、ミロール方面に画面変えて動けばいいだけだったなんて」
「は? 今のどこの異界語だ?」
「さあ、僕なにか言いました?」
「いや、今のはきっと異世界から徒労感と共に送られてきた電波だったんだろう」
こうしてわが軍は多大な時間を空費しつつ、ミロール侵攻の足掛かりを得たのだった。



ミロール方面での開拓を進めていると、こちらの大陸でも動きがあった。
偵察隊から他の魔術師勢力の町を発見したとの報告がきたのだ。
「ふむ、という事はまた外交だな」
「そうですね、いいですかますたー、前みたいな失敗は無しですよ
城の廊下を鏡の間に向かいつつ使い魔と話す。
「分かっている、それよりも相手の魔術師のプロフィールを教えてくれ」
前回はいきなりだったから失敗したのた、わたしだって事前に準備すれば、そうそう失敗はしない、そもそも私を除いて奇人変人が多い魔術師といきなり会おうっていうが間違いなのだ。
うんうん頷きながら、相手のプロフィールと写真が張られた紙を受け取ると、使い魔が怪訝な顔をする
「マスター、ひょっとして大それた事考えていません?」
「なに?」
「いや、奇人変人で一括りなのに、自分だけは違うって大それた事」
「人の心を読んだ上に失礼な事言うないっ」
蹴飛ばそうとしたが、使い魔は鏡の間へのドアの開いた隙間に素早く体を滑り込ませて逃げる。
「まったく」
部屋に入ると、使い魔はすました顔で待っていた。
「マスター、ちゃんと確認してくださいね」
「わかっている」
わたしも二度も同じ過ちをするつもりは無い。
「ふむ、名前はカーリー、ソーサリー5、デス5、技能は創造技巧か、色々な道具の作成に長けている・・・・と、厚い個人だな」
「え?そうでか?冷静そうな人に見えますけど」
「いや、化粧が」
「ぶっ」
使い魔がこけた。
「なるほど、そのための創造技巧か、さそがし様々な化粧道具と年齢を隠す技術を研究・・・・」
「ますたーー、絶っっっっっっ対にそれを本人の前で言わないでくださいね」
使い魔が声を荒らげる。
「わ、分かっている」
使い魔の迫力に思わず壁に手をついて仰け反る。
「いいですか、まかり間違って、さっきの事を少しでも言ってしまったら間違いなく相手を激怒させて、前みたく、全面戦争ですよ」
「分かっていると言っただろう、前のはちょっとした聞き違いによる失敗だろうが」
「そのちょっとした失敗が、マスターの場合は洒落になってないんです、相手の痛い所を見事にクリティカルヒットじゃないですか」
「分かってるってばよ」
「いいですか、今度はちゃんと挨拶して上手に相手の寝首を搔くんです」
「おまえ、さらっと怖い事言うね」
「戦争中なんですから当然です、相手だってそう思ってるだろうし」
「うむ」
今一度、写真をみてみる。
「ところで、な」
「なんです?」
「なんでカーリーって名前なのに額にホクロがないんだ、やっぱり、マサオ・センと、かぶるからあのサークレットで隠してるとか」
こてっと使い魔がこけた。
「もー、マスターってやっぱり信じられないっ」
ぽかぼか使い魔が殴ってくる。
「そんなに相手と全面戦争したいんですか、馬鹿、馬鹿 馬鹿」
「人の事を馬鹿馬鹿言うんじゃない」
「馬鹿だから馬鹿なんです、どうしてそう思った事をぽんぽん口に出すんですか」
「やかましい」

ゴインッ

あまりの使い魔のしつこさに苛立ち紛れに壁を叩く。
ん?今、ヴィンなんて音がしたような気が
「マスター聞いているんですか? 良いですか、決して厚化粧の年増とか、アイコラしすぎで、目がはれぼったいぞ、ケラケラケラなんて言っちゃいけませんよ」
「お前だって、凄い事言ってるぞ」
「マスター程じゃありません、分かってますか?」
「分かっている、しつこいぞ」
「しつこく言わないとマスター、すぐドジするじゃないですか」
「ごきげんよう、わたしがカリーです、あなたが名高いホルス殿ですか」
「やかましいっ、誰が厚化粧の年増ババア、お前のは化粧じゃなくて、左官屋の塗りたくりだ、このやろうめがっ、などと言うか!」
「酷くなってるじゃないですか、そんな事絶対本人のま・・・・・あ」
「ん?どうした?真っ青な顔をして、後ろ?後ろがどうした?」

振り返ると夜叉が居た。

「あ・・・えと・・」
「ぶっ殺す」
ブツン
通信が切れた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・なあ、これって」
「・・・・全面戦争、はい決定」
「私が悪いのか?」
「他になにが原因だと?」

こうしてカーリーとの戦いは始まってしまった。
「どうして、こう人は理解し合える事が出来ないんだろうか」
「そりゃ、マスターが間抜けすぎるから」
「やかましい」
流石に多少は私も失敗したなーと反省しているので、使い魔を一喝するだけですませた。

しかし、なし崩し的に始まった戦いではあったが、意外にもカーリー軍は弱く、終始こちらの有利に展開していた。
「どうもカーリー軍はラ・ジャ軍に痛めつけられていたようですね」
「そのようだな」
戦場の様子をみていると、急遽集められたらしい経験不足の兵がこちらの凶悪なバーサーカー達にいとも簡単に蹴散らされていっている。
「きっと、一時的にしろ、こっちと手を組んで体制を整えたかったんでしょうね」
「まあな」
「マスターのせいで全部御破算になったけど」
「むこうが一方的に断交してきたんじゃないかよう」
思わず情けない声を出してしまった。
「でも、いいんですか?いくら侵攻作戦が順調とはいえ、こうも首都の防備を手薄にして」
「ん?」
確かに今のわが軍は首都から次々とバーサーカーを前線に兵を送っているので、守備兵力としては、精鋭ソードマン部隊が1部隊が駐留しているのみである。
「なにか、問題でもあるのか?」
「問題って、首都が急襲されたらどうするつもりなんですか?」
ふふんと使い魔の懸念を鼻で笑ってやる。
「それは杞憂というものだよ、戦場は海を挟んでの向こう側、こちらまで遠征に来れる戦力はカーリー軍には無い」
ぬははははと笑ってやると。
「あー、そんな油断ぶっこいてますと、痛い目に遭いますよ」
「ははん、敵がきたら私の魔法で片づけてくれる」
「そんなこといってると、こんな風に」

ある〜日、町の中♪
クマさんに、出遭った♪
マスターの、散歩道〜♪
クマさんに出遭った〜♪

「って、なんだこのでっけークマはっっっ」
「マスター、ウォーベアーが町に襲ってきました♪」
「なんでだーーーっ!? 」
「ワンダリング♪ワンダリング♪マスタ〜♪アッホ〜♪」
「なにげに人をけなすなー」
「えーとですね、モンスターの巣とか潰しておかないとラーニングモンスターっていう怖いモンスターが町を襲ってくるんですよ」
「げっ、あの土饅頭みたいのがそうだったのか」
「そ〜なんで〜す♪」
「歌うなっ、って、おい、追いかけられてるよ私、お前なんとかしろ」
「えー、僕には無理ですよ、あ、でも応援は出来ますよ、フレーフレーマ・ス・タ」
「そんなものいらんっ!、そうだソードマン、守備隊のソードマン部隊はどうした、こんな時こそやつらの出番だろ」
「あさっての方向へ突撃していきましたよ」
使い魔が走りながら、顔をくいっと向ける。
同じ方向を見ると、立ち上る砂埃が見えた。
この町の守備隊のソードマン部隊が上げている砂埃に間違いはない、ただ進んでいく方向が間違っている。
「なんでだ!?、あいつら一体何を考えている?、」
「何って、そりゃマスターの思惑どおりに動いて居るんでしょ?」
「反対方向だぞあっちは」

「ますたーのミス〜、GO〜GO〜、GO〜GO〜♪
 操作のミス〜 GO〜GO〜 GO〜GO〜♪」
なんて忠実ソードマン〜、信じられない方向〜
それでも行〜く、進んで行く〜♪ 」
「メキシ○ンロッ○なんて、今どき知っている奴がいるかーっ」
「忠実な兵士達ですよねー、たぶん首を傾げながらも指示された通り進撃してるんだから」
「ぐああああっ、仕方なかったんだよ、どうしようもなかったんだよ、あの十字キー、使い辛いんだよ、なんとかならんのか、こうコントローラーを横にしないとうまく対応できないっていうか」
「あー、それ設定で変えられますよ」
「だからそういうことは早く言え、早くっ」
異界語も交えながら話しをている間にも、私達は足を止めない、止められない、もちろんウォーベアーも止まらない、奴らの食欲も止められない、気のせいでもなく目が血走って、意地汚く唾をまき散らしている。グルルルルと聞こえてくる音はウォーベアの腹の音で無いと信じたい。

さて、ここで問題です、なぜ私はそんな細かい所まで分かるのでしょうか?

答え

「距離が縮まってるよ、おいっ」
「広がってはいないですねー」
暢気な使い魔の声を無視して、走るスピードを上げる、くっ、やつら巨体のくせになかなか素早い、このままではこっちの体力が尽きて、喰われてしまう。
「よし、こうなったら、一緒に逃げてないでお前と私で二手に分かれよう、そうすれば確率は二分の一だ、恨みっこなし、どっちかか助かる方法をとろう」
ちょびっと、『僕がマスターの囮になります』とかいう言葉を使い魔に期待していたのだが。
「それって、マスターにものすごい不利ですよ」
そんな気は全く無いようだった。
「なんでよ」
「なんでって、ちっこい僕とマスター、どっちが食べがいあると思います?」
「・・・・・・」
そうだった、こいつはこういう奴だった、表面はともかく頭の中ではあくまで立場は五分と五分、なんでこんな提言をしたんだろ私は。
「ほんとマスターって、こういう突発的なアクシデントに弱いんですねー」
使い魔がため息をつく、なんかこいつ余裕だな、やはり小動物型で四本足で走るから、速く走れるんだろう、だとすると、とっとと一人で逃げ出さない所は少しは主人を想う気持ちがあるんだろうか?
「マスター、前になんか言ってませんでした?敵がきたら、私の魔法でなんたらかんたらって」
「そうだ、その方法があった、すっかり忘れてた」
「・・・マスター今の発言、自分の存在意義、全否定してます」
「やかましい、よしっ呪文を唱える時間を稼げ」
「嫌です」
間髪入れずに言いやがったこいつ。
「走りながら唱えて下さい」
「そんな器用な事ができるか」
「じゃあ、食べられてください」
「お前、ほんとに私の使い魔か?!」
「当たり前じゃないですか、じゃなきゃとっくに見捨ててます、大丈夫人間死ぬ気になれば大抵の事は出来ます」
む、若干気になる所もあるが、こいつもこいつなりに主人に尽くそうという気はあるらしい、それになんとかしなければ、本当に喰われてしまう。
「こ 根元の源であるマナよ ぜい、ぜい、き、気たれ、ぜい、大気の精霊よ、せい、ぜい ファ、ファントム召還っっ」
なんとか走りながら、途切れ途切れではあるが呪文を唱え終わると。

ぽわわわん

「呼ばれて、飛び出てジャジャ」
「お約束な、台詞はいい、非常時だはやくいけ、あのクマを倒してこい」
「ほっほほーい」

げしゅ

ファントムは消滅した。

「弱っ、ファントムものごっつ弱っ」
「そんなの、この島のノード攻略の時から分かってたんじゃ」
「あいつらは野良、今のは由緒正しく召還した。ぴっちぴちのファントムだぞ」
「ファントムにそんなのあるんですかねぇ、でもさっきのファントム、特に弱かった気がするんですけど、やっぱ喘ぎながら召還呪文唱えたから、出てきたのも気息奄々なファントムだったんじゃないんですか?」
「そんな事があるのか!?」
「やっぱ呪文は落ち着いて唱えないと、」
「だからその状況をお前が作れと言っている!」
ついっと、使い魔は顔を背ける。

嫌らしい、こいつらしい、憎らしい :ホルス 心の川柳

などと馬鹿な事を考えているうちに、使い魔は斜め方向に走り始めた。
徐々に開く私との距離。
「待て待て待てぃ、お前どこに行く、主人は見捨てないんじゃなかったのか!?」
「見捨てませんよ、だからマスター、早く早く、そんなんじゃ追いつかれちゃいます」
使い魔は走りながらくるりと振り返り,急かしてくるが。
「くっ、こっちは知性が売り物の魔術師なんだ、これ以上ペースを上げられるかっ」
「うーん、だとこのままだとまずいですね、マスター、ほかの魔法はどうです?得意の必殺呪文とかないんですか?」
「よし、それだ、それでいこう!」
そろそろ余裕が無くなってきた、とにかくなんでも言い、この状況を打開する魔法を
「くらえ我が必殺の治療の言葉っ、ってどこが必殺じゃい、クマを元気にしてどうする!癖になっとるんじゃから仕方ないんじゃい!」
「自分で突っ込んでるよ、このマスター」
い、いかんまた無駄な体力を消耗してしまった。めまいもしてきた、このままでは本格的にまずい
「マスター、ほかには戦闘魔法ないんですか?」
「あ、あとはじょ、上位魔法消失、聖なる鎧、聖なる武器・・・」
「また、見事なまでに補助魔法ばかりですね、それかける相手がいないと駄目ですよ」
「そんな事は分かとっるわい」
「自分にかけて特攻するんですか?」
「だれがするかっ、この私の細腕いくら強化したって、あんなごついクマどうにか出来る 訳ないだろう」
「ならどうするんです?気休めにあさっての方向に突撃していったソードマン部隊にかけてみます?」
「なにか意味あるのかそれは!?」
「そりゃ、マスターの弔い合戦の役に立ちます」
「そんなものに役立ってどうするっっ!!!
 もっと建設的に、そうだお前にありったけの補助魔法をかける、だからあのクマを倒せとは言わん、攪乱してこい」
「僕にかけるのは良いんですけどね、ひとつ問題がありますよ」
「なんだ、倒せとは言ってないぞ、力の差がありすぎるってのは無しだ」
「いや、強化されたら僕一人で逃げるって所が問題なんで」
「そういうのは問題外って言うんだっっっっ!!、この馬鹿者ぉっっっ!!」
「あははは、マスター面白い」
「面白いでは無いっ げほ、げほっ」
まずい、本格的にまずい状況になってきた
「マスター、もう、へんな事しないで素直にソードマン部隊と合流しましょう、あっちも急いでこっちに向かってきてますし」
「そうだ、お前いいこと言った」
「マスター、かなり混乱してますね、それって当たり前の事」
もう使い魔の言葉に反応する余裕が無い、とにかく走って走って走りまくった。
そして
「マスター、ぎりぎりセーフ」
はっとして気がつけば、ソードマン部隊があげる雄叫びが聞こえてきた。
あと一歩の所で邪魔されたウォーベアーが怒声をあげ、戦いが始まった。
剣で肉を切り裂く音と、爪と牙が肉を引きちぎる音が響く戦場からほうほうの体で退散して、座り込む。
もう体力の限界だった、一歩も動けない。
戦場から少し離れた所でウォーベアーとソードマン部隊の死闘が繰り広げているのを見つつ、首都の防衛戦力は増やそうと心に固く固く誓った。

こうして危うく首都陥落という危機を乗り越えたわが軍はカーリーの領土を付き次と併呑していく。
カーリーもハルバーターを大量招集し、わが軍の怒涛の進撃を止めようとしているようだが、どうにも力不足、精鋭バーサーカーの赤い波の前では点在するだけのテトラポットのようなもの、わが軍の浸食を止める事は出来ない。
町へとなだれ込み召喚されたファントムなど、蚊とり線香の煙ほどの障害にもならない。
「まあ、マスターが身をもって体験してますからね」
「やかましい」
この不利な戦況に、きっとカーリーもハンカチ噛みつつ悔しがっていることだろう。
「ふっ。カーリーの防衛戦も奴の化粧の乗りと同じく今やボロボロだな」
「うわっ、マスターそれ物凄く極悪な台詞、ついに悪の魔術師に目覚めたんですか?」
「ふふふふ、使い魔よ、私をいつまでも昔の私だと思うなよ」
「え?なんですかメイドさん、ふむふむ、この前のマスターとウォーベアーとの愉快な追いかけっこで、実はホルス様って、あんなにも間抜けだから悪い人じゃないと見直されたのにすねてる、なるほど、良かったですね、マスター」
「良くないっっ」
不本意過ぎるイメージを払拭する為に、悪の魔術師というものを演じていたつもりだが、ずぐに元に戻ってしまった。
「なんでです?、常々私は悪の魔術師ではない、散歩しているだけだ、生贄の物色をしてるんじゃない、誤解するなとか、言ってたじゃないですか、呪文の溶解は出来るのに、なんで人の偏見の溶解は出来ないのかなぁ、なんてぶつぶつ言ってた時は本気で心配しましたよ」
「だから、その誤解の解け方が問題なんだ、私の人格でなく、なんで間抜けな行動で誤解が解けてしまうんだ」
「それがマスターの人得ってやつで」
「人徳だ、尊敬されるのは!、お前言葉使い変だぞっ」
「だってー、今回のはまさしくそうで」
「うるさいわい」
「まあ、だからって、似合わない事しててもしょうがないですよ、ほら幸い、戦況は有利に展開しているんだし」
「うむ、だがな、そうすると」
ちらりと戦場を見る。

「うはははははははははははは、弱い弱いぞ、きさまら、」
「おっほほほほほほほほほほほ、このわたくしに跪いて許しを乞いなさい。」

「ブシャンとヤラナのあいつら二人にやりたい放題やらせる事になるわけで」
「あー、確かにそれはちょっと問題かもしれませんね」

「崇めろ、讃えろ、詩にせよ」
「【ブシャン殿、勝って飛び散る、敵の勢】、おほほほほ、素晴らしいですわ」

「それりゃ俳句・・・というか川柳だろ」
頭が痛くなって、手で頭を抑えると、使い魔がぽんぽんと私の肩を叩く。
「まあ、勝ち続けているんだから良いじゃないですか」
「そうだな、そういう事にしておこう」

結局、首都決戦でカーリーも戦力集中、魔法生物召喚やらで抵抗したが、わが軍の勢いは止まらず、封印され、軍門に下った。
ムクドリ
2008年04月27日(日) 20時47分18秒 公開
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■作者からのメッセージ
実際、ミロール行きは苦労しました。
それと油断していた時のランベールモンスターの急襲にも本当に焦りました。

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私も大抵後方の都市や首都なんかはスカスカでちょっと困ることもあります。 10 月読 ■2008-07-30 00:21:31
ファンムは使えますよー。ほんとうだよー。 10 あむぁい ■2008-06-25 23:06:55
ミロール行きで半分使ってる。ランページモンスターは時々寝首をかかれますよね〜。デーモンロードがうろつくなとか… 10 シムシム ■2008-06-03 12:28:04
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