記憶喪失マスター ホルス奮戦記 その6 〜シャーリーよお前もか〜
「いいですか。マスター」
執務室の中、私の前には妙に思い詰めた使い魔の顔があった。
カーリーを下した後、すぐに偵察隊から他の魔術師の部隊の姿を確認したという報告が来た。
という事は、次にくるのはあれである、そう、外交交渉。
互いの勢力圏が接したのだ、何らかの接触をしてくるのは明らかだ。
そして、こちらの腹を探るためにもなんらかの連絡はしてくる筈であり、その場で取り敢えずの友好関係が築かれるか、それとも冷やかな中立関係となるか、もしくは最悪の開戦となってしまうかが決まる。
ちなみに今までの外交戦の戦歴は0勝2敗。
まともな言葉すら交わしていない気もする。
過去の些細な不幸による行き違いが原因とはいえ、こうも失敗続きでは流石に私も使い魔の言葉に神妙に頷かざるを得ない。
このままでは私は外交界において、会話すらまともにしようとしない程好戦的で粗野な魔術師という評判が確定してしまう。
「分かっている」
「今度こそ、今度こそ、いきなり断交、全面戦争はいけませんからね」
「ああ」
「とくに今度の魔術師のシャーリーさんはは傷つき易い人なですからね」
「シャリ・・・・・お米の国の人か?」
「マスター!」
使い魔が語気を荒くして、私を窘める。
「わ、分かっている、ちょっとしたお茶目だ」
「それで何度、物事をややこしくしたか」
う・・・、流石にこいつともつきあいが長くなって、お互いの事がよく分かっきているだけに、こいつの私に対する信頼度は低い。
別に普段が険悪という訳ではない、メイドーずは虐待していると誤解しているが、
他の者は掛け合い漫才の良い相方と・・・・いや、そんな事をどうでも良い、
とにかく、こと魔法と、外交交渉時において、本音を腹にため込んでの言葉のやり取りをするしたたかさに関しての信頼度は最低だ・・・・って、それって魔術師としてどうなんだ?
「マスター、ちゃんと聞いてます?」
「ああ」
「絶対、変な事言わないでくださいよ」
「分かったから、さっさとプロフィールを見せろ」
使い魔にうながすと、渡すかどうか少し迷ったそぶりを見せながら私に書類を渡してくる。

しかし、傷つきやすい人と言っていたな、そんなに繊細な人なんだろうか、こう細面で儚げな雰囲気を漂わせてと、頭の中で深窓の令嬢のような勝手なイメージを作り上げつつ見た。
「うっ!?、こ、これは!?」
のが悪かったらしい。
渡された書類を見て、いや正確には、まずそこに張られた写真が目に飛び込んで、思わず。
「ふくよかな人なんです」
流石は使い魔、伊達に私と長い付き合いがある訳ではない、私が吹き出すように何か言い出してしまわないように、畳みかけるように言う。
「む、た、確かにな」
使い魔の言葉に私も心を落ち着けた。密かに深呼吸を何回かし、
「そういう表現もある」
ぴくりと使い魔の眉のあたりにある毛が上がる。
これも言ってはいけない言葉らしい。
「む、むう」
改めて写真を見る。
強烈だった、この顔写真の枠に収まりきらない顔幅というのはどういうものだろう、
その下の体の恰幅の良さも容易に想像できる。それにこのたらこ唇、
シャーリーという、どこか神秘的な名前がこれほど似合わないのも、いやエキゾチックという意味から考えると合っているか
そういえば、立てば芍薬、すわれば牡丹、歩く姿はユリの花という言葉があったが
これは立てば米粒、座れば煎餅、転がる姿は米俵というところでは
「いいですかっ、マスター」
「は、はい」
顔写真に見入っていてしまっていたので、思わずどっちが使い魔か分からない、そんな返事をしてしまう。
「絶対、使用前の広告写真なんて言っちゃいけませんよ」
顔を寄せてくる使い魔の目が据わっていた。
「お前・・・また、なんて事を・・・・」
こいつもまた私に負けず劣らず、相手の肺腑を抉るような言葉を良く思いつく。
待てよ
「よくよく考えたら、今までのことも、全部お前が変な事を言ったせいで失敗してたんじゃなかったか?」
「僕がぁ?」
使い魔はいかにも心外そうな顔をするが、考えてみると、私はこいつのあまりにあまりな表現に驚いて、思わず口走り、相手がキレるのがパターンだった気がする。
「そうだ、お前がいつもいつもわたしに変な事をささやいて、それで物事がややこしい方向に進むのだ」
「ひどいです、僕はいつもいつもマスターがドジ踏んで、三回錐揉み空中回転でドジ踏みまくって、でんぐり返りのどっこいしょで、相手の地雷を思いっきり踏み抜くのを注意してるのに」
「私はどんなどじっ子だっ」
「天然純粋培養、超純水的などしっ子です」
「なんだそれはっ、お前、適当な単語並べれば良いってもんじゃないんだぞ、
訳がわからん」
「その訳分からなさが、マスターのどじっ子レベルです!」
「言わはりましたなっ」
「言わはりましたっ」
ぜいぜいと肩で息をしながら、私と使い魔は向かい合う。
「も、もうやめよう、こんな不毛な言い争い」
「そ、そうですね、あまり相手を待たせるのもどうですし」
じゃあ、いこうかと私と使い魔はふらふらと鏡の間へと向かった。
いつも通り、椅子に座り、鏡に相手の顔が出るのを待つ間、わたしは目を瞑り、精神統一をする。
相手の顔はすでに写真で確認ずみ、心の準備はばっちり出来ている。
もう不用意な発言はすまい、今回は互いに顔見せ程度のことだ、適当な社交辞令を重ねて次に繋げる、簡単な事だ。
その簡単な事に今までことごとく失敗してきたのだが。
いやいやいや、弱気は禁物三度目の正直、大丈夫だ。

ブゥン

鏡の魔力が活性化した鈍い音が聞こえてくる。

「シャリー様がお出になりました」

使い魔のかしこまった声。
さあ、会談の時だ、そう、相手の目をちゃんと見て、ちゃんとっ
「ぶっ!?」
 目を開けた途端、相手の顔が視界いっぱい。
そういっぱいだ
「か、顔が、鏡に入りきってない・・・」
やはり写真は写真、現物の迫力には到底叶わなかった。
こいつ鏡に顔をくっつけているのか、これはそのせいなのか?
いやいやそんな間抜けな事してる筈がない。する必要はどこにも無い。
ということは、これは、これが意味する所は、
「ま、マスター?」
使い魔も動揺している。だがこいつは直接対談している訳ではないから、どっか見えないところでひっくり帰っていても構わないが、わたしは問面に居るのだぞ。
「お、お前、ちょっと私の足を噛んでくれ」
「えー、なんで僕がそんな事」
「失敗できないって言ったのはお前だろ」
「わ、分かりましたよ、マスターちゃんとお風呂入ってます?」
「失礼な事いうな」
「じゃあ、えい」

ガブリ

使い魔は思いっきり噛んでくれた。

「ぐぉっ、ぬっ」
「どうかしましたか?」
鏡の向こうに居るシャリーの怪訝な声に、私は痛みをこらえて顔を上げ、にこやかに笑う。
「いや、なに、噂に聞いていたよりも凄いので思わず動揺・・・」

がぶぶぶぶっ

私の思わず思いついちゃったよ口走り、そのまま断交状態のコンボを使い魔は再び噛みつくことで防ぐ。
「ぐがっ、その凄い美貌であったので、思わず言葉に詰まってしまっていた、申し訳ない、失礼をした」
危ない所った、二度あることは三度あるで失敗したというのはよく聞きもするが、三度目の文字通りの正直で、失敗などというのは、聞いたことが無いし、恐らくこの先も無い、その唯一の例外として記憶されるのは嫌だった、しかもことわざ辞典かなにかで、間違った用法などの例として乗った日には・・・・。
いかんいかん、また余計な事をつらつらと

「そうですか、ホルス殿はなかなかお口がお上手のようで」
苦しい言い訳のせいか、それとも本人に自覚があるのか、あからさまな社交辞令と受け取って、相手も本気にとらず口調はそっけない。
それでも別に悪口を言っているではなし、シャーリ側も殊更事を荒立てる気は、今の所は無いらしい。
「私達もあなた方に敵意を持っている訳では無いのです、出来れば理解していきたいと思っています」
「ふむ、確かに相互理解は大事な事だ、多少文化が違っても、我々はお互いに許容して遣っていける筈」
「・・・・そうですね、では今後も友好関係を築けるように願っています」

ぶいん

通信は切れた。
どうもあまり友好的な態度では無い。まあ中立といったところか
だが、今までのようにいきなり断交→全面戦争という、たた喧嘩ふっかけただけで、外交でもなんでも無いというのは避けられた。
これからの成り行きでどう転ぶか分からぬが、とりあえず戦闘は無しという所で踏みとどまれた。
「しかし、凄かったな」
噛まれた足をさすりながら、使い魔に言う。
「ええ、やっぱり本物の迫力は違いました」
「・・・お前もう少し、優しく噛んでも」
「そしたら、絶対マスター失言していました」
「むう」
言い返せない、確かにその可能性は大だった。
「見たか、鏡に顔が収まりきらなかったぞ、しかもなんだあのたらこ唇、あれじゃあ、シャーリーと言うよりは」
「言うよりは?」
「ビックママ、参上っ、だぞ」
「あはははははは」
使い魔が笑い出す、何気なく言った事だったのに思いがけず、使い魔に受けたので、私もちょっと調子に乗ってしった。
「ほら、頭に虎柄というヒョウ柄みたいな真っ黄色な三角ずきんみたいのつけて、体にも同じバスタオルみたいな服まきつけて、唇に真っ赤なルージュをつけて、
うーや、あばらんば、さばらばんば、うーやほやほやって唄って踊ったらさぞかし南国ショーで見物だろうな」
「きゃはははははは、マスター止めてください」
使い魔が笑い転げるので私もなんか楽しくなってきた。
普段ならこんな馬鹿な事はしない。誓ってだ。
だがいつもすまし顔の使い魔があまりに笑い転げるのでつい。

ぶいん

「あ、そうそう、先ほど言い忘れた事が」
「あばらんば、うやたー、はばらんば、ひ、ひぃーーーーっ!?」
私の驚きの叫び声の後、静まり返る鏡の間。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
私は踊りの格好のままで固まっている。
使い魔も腹に手をあて、転がったままの格好で固まっている。
シャーリーも無表情で固まっている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・どうやら、我々にはあなた方の文化は、どうにも理解し難いもののようですね」
そう言い捨て、シャーリーは通信を切ろうとする。
私は慌てた、折角上手くいってたのに、このままあんな奇怪な事をしている変態共らとは断交だと言われて、戦闘開始なんて事になったら余りに情けない、情けなさ過ぎる。
このままでは、きっと後悔で三日は枕に頭を埋める事になる。私は必死だった、そう必死だったのだ、必死になって引き留めた。
「ま、待て、待ってくれ、私の話を聞いてくれ、うんばやビックママっ!」
文字通りに必死な言葉を使って。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
先ほどよりも数段重い沈黙。
ええ、分かっています、分かっていますとも、
あれでしょ?いつものあれって奴でしょ?
はい、それまで〜よ〜♪ って奴でしょ?
「そうですか、先ほどしていた事は私を表しての事でしたか、ええ聞きました、あなたの心の声はしっかり聞きましたとも。」
「あー、誤解だと、私は今激しく主張したいのだが・・・・」
「お前は敵だ」

ぶつん

通信は切れた。
「なあ」
「僕、マスターとは暫く、口聞きたくありません」
「お前だって笑ってたじゃんっ」
魔術師ってやっぱり独りだなぁ
しみじみ思ったその日でありました。

こうして不幸な行き違いによって、わが軍とシャリー軍との戦闘がはじまった。
シャーリー軍とわが軍の軍事力はほぼ互角。
真正面からぶつかりガップリ四つに組んでの力相撲、
お互いに一歩引かないと言いたい所だがシャーリの怒涛のがぶり寄りに、わが軍の戦線はジリジリと後退している、さらには強烈な張手とも言えるスピリットの奇襲、わが軍の後方の無防備なノードが奪われる。
「くっ、流石ははお米の人、凄いど迫力だ」
「だからマスター、その発想から離れません?」
「ぐはっ、このノード、ハイスピリットで融合してる、取り返せん」
「だから言ったじゃないですか、けちってスピリットばかりで融合するんじゃなくて、せめて敵に近い所のノードは、ハイスピリットを使えって、ほら、取り返すのに何体もスピリット犠牲にして、安物買いの銭失いって知ってます?」
「やかましいわい」
錯綜している戦線の状況の書かれた地図を見続けていると、些か疲れてきて、ふとどうでもいい疑問が頭にもたげてきた。
「しかしなぁ、奴の頭の上に乗っているの、あれはなんだ?、あの白いもの」
「え、シャーリさんの頭の上の物?見て分からないんですか、あれ頭蓋骨ですよ」
「それは分かっているんだが、何故わざわざ被ってるのかと・・・・・
 うーん、そういえば、お米の国の人の武将の中には倒した敵の頭蓋骨で杯を作った者が居たとか、うん、流石はシャーリーだ」
「何が流石なんだが知らないですけど、自分が負けたらそうなる可能性があるって事分かってます?」
「むむっ、確かにそうだ 」
ぼーーとして、馬鹿な事を考えてる場合ではなかった。
「まあ、マスターの言い方だと、さしずめお茶碗にされたりして」
「・・・・・なんか、情けない使われた方だな、おい」
「もっと高級な使われ方が良いんですか、うーん」
「いや、そんな事は考えなくていい、そうならない様にどうやったら勝てるかを考えてほしいんだが」
「始めに変な話をしたのはマスターじゃないですか」
「う、うむ、そうだったな、なにせこの状況ではな、ちょっと頭が膿んできた」
それにしても、シャーリー軍の主力はウルフウルフウルフである。
そしてこちらの街への奇襲攻撃。
「くそ、あのわんわん101匹大行進はなんとかならんのか」
おかげで主力部隊は町の防衛に右往左往している。
「しかも道の真ん中でぼぉっと立ってるグール共、やつらが邪魔だ」
そう、ウルフ部隊に置いてけぼりのようになっているグール部隊だが、
そのせいで、こちらの円滑な軍移動が妨げられてる。
「うーん、広い戦術レベルで考えると、グールで足止め、逆に足の早いウルフ部隊でこちらを攪乱、あわよくば町の攻略、中々やりますねシャーリー軍」
使い魔が感心する。
「敵を褒めてどうする、なんとか手はないか」
「マスター、いつも力攻めばかりでしたからね、だから敵にちょっとこういう戦法とられるとすぐ手詰まりになっちゃう」
はぁと使い魔はため息
「だから、私をけなしている暇があったら。なんか良い作戦は思いつかんのかお前は」
「マスター、朱に交われば赤くなるって知ってます?」
「ん?強い個性に長い間接してると同じような個性になるっていうあれか?」
「そうです、だからマスターのせいで僕にもどうして良いか、分からない頭になってしまって」
しくしく泣きまねをする使い魔
「それだけ人を虚仮にする言葉がぽんぽん出るくせに、何言っとりやがりますか、お前は!」
とにかく、陸戦はかくも手詰まりだが、それでも海上戦についてはこちらのウォーシップが活躍し、制海権は握っていた為に戦力の海上輸送は上手くいっており、なんとか戦線は大きく後退することなく、流動的ではあるものの、初期の線を保っていた。
こうした一進一退の攻防の中、なにかこの戦力バランスの天秤をこちらに傾ける良い手はないかと悩んでいると、興奮気味に戦場で大発見をしたとの報告がヤラナからきた。
小さい戦術的勝利でも積み重ねれば、戦線全体に大きな影響を及ぼす事になる。
早速ヤラナを戦場から呼び戻した。
「わたしく、戦場で大変な発見をしてきたのですわ」
興奮ぎみのヤラナ。
わたしも思わず身を乗り出す。
「ほう、なんだそれは」
敵の弱点か、それとも戦線の穴か、なんにしろこの膠着状態を破れるなら何でも。
「掘るス殿」
「は?」
って、思ってたのに、いまこの人、人の事変な風に言わなかった?

「ヤラナいか?」

「親指立てるなぁーーーーーーーーっ」
叫び声をあげた後、ぜいぜいと肩で息をしながら、ようやく心の動揺を鎮め、
ヤラナを見る。
いまだ親指を立て、にっこり笑って口の端の白い歯を光らせている。
「まさかとは思うが、もしかしてと思うが、戦場での発見ってそれの事じゃないよな、あははははは、そんな訳ないか」
これは現在の膠着状態に、ピリピリしているマスターの緊張をほぐす為の軽い冗談の筈、そうだ、それに違いないと自分にいい聞かせつつヤラナに尋ねる。
「おほほほほ、マスター興奮し過ぎですわ」
『そうですわ、これは軽い冗談ですわ』とその後続いてくれぃ、と祈さていると。
「わたくし淑女として嗜みとして8・0・1 というものがある事を知って、とっても興味が湧ましたの、これは大発見ですわっ」
マスターは灰となってサラサラ流れている。
どっかのぼったくりのカ○ト寺院で聞けるような言葉が頭の中を通り過ぎる私を使い魔が
「マスター、マスター、異世界から戻って来て下さい」
と、引き戻す。
「さあ、ご遠慮なさらないで、わたくしの前でめくるめく耽美な世界を、繰り広げてごらんなさい、わたくし、じっと見て堪能してさしあげますわ」
おおっと、マスターは失われてしまった。
「だからマスター、戻ってきてください」
また、使い魔のおかげで逝ってしまった意識を取り戻す事が出来た。
「ひゃっ、百歩譲って、発見がそれだったとしよう」
本当は百歩どころではないのだが。
「なんで私の所に来る」
それが疑問だ、そういうのは手近な戦場で適当に済ませてもらいたい。
わたしは御免だが、戦場ではそういう文化があるらしいともいうし
「それはいけませんわ、わたし聞きましたもの」
「な、なにを?」
「こいういのは掘るス殿が適任だと」
「なんでたよっっっっ、!!それとその言い方止めてくれっ!!」
「だって」
ヤラナは私を見てから、
「ですもの」
チラッと使い魔を見る。
「おほほほほ、こんなシチュエーションは掘るス殿の所でしか出来ませんわ」
「私と、こいつかいっっっっ」
「えーーーーーーっっ」
私と使い魔は同時に叫んだ。
「「なんでよ(ですか)」」
思わずハモってヤラナに聞く。
「魔術師の使い魔といえば、魔法の不思議可愛い生物、魔法の不思議可愛い生物といえば都合により擬人化」
おい、なんだその魔法少女な設定は、なんか混じって来てるぞ
突っ込みを入れたいのだが、両手を合わせ、目をキラキラさせて陶酔状態のヤラナは多分聞いてくれないだろう。
「そう、猫耳、尻尾、一人称は僕で語尾に、にゃあ」
「僕、そんなこと一回も言った事無いし」
今のヤラナには何言っても無駄だぞ使い魔よ。
「止めはご主人様!」
ビシリと私を指さす。
あんたの腐った精神の部分に止めを刺したいんだが。
「さあ、めくるめく耽美で萌え萌えな世界をわたくしの前で展開なさいっ、
 さあ、さあっ、さあっっ」
ずずいっとヤラナは迫ってくるが、どうにもその声が遠い。
なんか精神がどこかへふよふよと。
あ、そうだ、これは、あれだ、こいつは敵の精神攻撃という奴に違いない
シャーリもこの膠着状態に業を煮やして、大地を腐らすあの呪いをかける魔法の様に、私の精神を崩壊させようてしているのだ、こいつはヘビーだぜ。

「謀ったなシャァリー!!!」

私の突然の叫びに、同じく精神をどこかに漂わせて固まっていた使い魔はビクリッと震わし、迫って来ていたヤラナもあとずさった。
「わたしはやらない!」
気合一発で自分を取り戻した私がきっぱり言い切ると、ヤラナはショックを受ける。
「なぜですの?」
「当たり前だ」
私が強く言うと、叱られた子供の様にヤラナはしゅんとする。
こいつも性格に変な所があるせいか、変な所で素直だ。
「だいたいだな、あんた女性だろ、ヤラナいか?なんてそんな事言うんじゃありませんっ」
その言葉にヤラナは不思議そうな顔をする
「あら、どうしてですの?薔薇が咲き誇る世界と聞いておりますのに、
そんな世界、男女を問わず、なんとも美しい世界ですわ」
両手を合わせ、うっとり夢見る表情のヤラナ。
あんたいろいろ間違ってるよ、というか騙されてるよ。
「あのな、どちらかというと、馬鹿が盛り掘こっている世界で、美しくも何ともないと思うんだが」
「あー、マスターそんな偏見は駄目ですよ、いろいろ敵に回します。」
真面目な顔をして使い魔が注意する。
「そ、そうなのか?」
「はい、そういう世界に関してもちゃんと理解してあげないと、でないと立派なマスターにはなれません」。
そんな立派なマスターになど私はなりたくない。
「僕は使い魔だから、そんな世界知らなくても全然問題ありませんけどね」
こいつは〜、自分だけ無関係を決め込みやがって。
「そうかい、そうかい、じゃあその立派なマスターになる為の補佐をする為にも、
 お前をその世界に放り込んで、堪能させてやるよ、しっかり経験してこい」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ、本気ですか!?」
使い魔の動揺する声を聞いて、少しは胸がすっとした。
「だいたいだな、誰がそんな事を教えた。」
しゅんとしていたヤラナが顔をあげる。
「それは、この前出会った、とても気品のあるハイエルフの女性兵士からですわ、
敵とはいえレイピアを振るう姿がとて華麗で、思わず見入ってしまいましたわ」
ふーん、ちなみにやられていたのはわが軍の兵だよな?
あんたそれに見入ってたんだ。
でも教えたのがハイエルフか・・・・。
居るんだなあの種族にもそういう人が、それとも私が幻想抱きすぎ?
「わたくし、アンデットというものに偏見を抱いておりましたわ」
「?」
なにか、また変な事言い出したぞ
「たとえレイスにさくっと吸われたとはいえ、生来の気品を消せるものではありませんでしたわ、わたくし敵味方を超えてその方とお話を・・・・」
「待て」
「はい?」
ヤラナは首を傾げる。 
「それって相手が・・・・・・」
「文字通りの腐女子だったんですね、思いっきり消されてるんじゃないんですか?
気品」
「価値観は歪んでいそうだな」
「なんの事ですの?」
「いや、そのなんだ、深みに嵌まるとやばい世界でもあるらしいから、程々にな
とにかく、戦場へ戻ってくれないか、あなたが腕を振るう場所はそこだ」
ここでマスターの精神を崩壊させる事ではないとの言葉はかろうじて飲み込んだ。
「分かりましたわ、ここは私の望んだ戦場ではありませんでしたわ」
うんうんと私と使い魔は頷く。
「あの御方に聞いた、コミケという大戦場に舞い降りて、私の華麗な」
「だから普通の戦場でお願いしますっっっっ」
あるのかこの世界に?いやある訳が無い、きっと敵もアンデットになったショックで異世界からの電波受信をしたんだろう。うん、そうに違いない。
「仕方ありませんわねぇ、わたしもこの軍の一員、義務は果たしますわ」
「そうしてくれ、頼むから」
拝む様に言うと、ヤラナも不承不承ながらも承知してくれ、ぱからぱからと馬を走らせ戦場へと帰っていった
「はあ、やっと言ってくれたか、やれやれ」
ヤラナとの一連のやり取りに、どっと疲れたので椅子似座り込む。
叫び過ぎて、咽がカラカラなのでなにか飲み物でもと使い魔を呼ぶ。
「あー、ところで使い魔よ」

びくり

「ん?」
使い魔は体を震わせた後、じりじりと後ろに下がる
「なんで、お前は距離とっているんだ?」
「駄目ですよ、ヤラナさんが居なくなって、二人きりになったからって、そんな」
「は? お前は、何を言っているんだ」
「マスター、僕は絶対マスターの相手なんて嫌ですからね」
「・・・・・・はい?」
おい、まさかとは思うが私が、そのさっきのヤラナが言ったような事を使い魔にすると思っているのか?
「そんなふうに誤魔化しても駄目です、さっきマスターの本音を聞きました、
僕を擬人化した挙げ句、牙も無いのにマスターの毒牙にかけて、無限地獄に放り込むって」
「って、おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」
誰がそんな事をするかと言っても、使い魔はいやいやと頭を振って、話を聞こうとしない。

しくしくしくしくしくしく

どこからかすすり泣く声が聞こえて来る。
メイドーず達のものだった。
居るんだよ、
空気みたいな存在に徹してるけどメイド達が
使い魔様、なんてお可哀相そうに、さんざんこき使われてあげく、身も心もボロボロにされるなんて・・・・・。
と、すすり泣くメイドーず。
もう勝手にしてくれ。
どうでも良くなって椅子に深々と私は座り込んだ。
・・・・・あれ?なんかシャリー軍に対してなんにも進展が無い、こんなに疲れたのに。
「はぁ・・・・」
私は深い深いため息をついた。

何時までも続くと思われていた我が軍とシャーリー軍との膠着状態ではあったが、均衡の崩れる時が来た。
そのきっかけは、このどうしょうも無い事ばかり起こる表世界には無く、裏世界にあった。
当初、植民都市を建設し開拓を続けていたミロールの探索は難航した。
表の世界とはあまりに違う環境、手強いモンスター達、そんな状況に兵も開拓民も戸惑い、探索も遅々として進まなかった。
しかしその状況は、ヘルハウンドに捕らえられていた英雄ラキールの出現によって打破された。
「動物とはですね、こう直接触れ合わなければいけないんですよ」
いや、あんた囓られてるだけだよ、などという助けた我が軍の兵のつっこみを無視し、あくまでもコミュニケーションと言い張り。
「ぼかぁ、幸せだなぁ」
と、結構年はいっている筈なのに、妙に雰囲気が若々しく、時々どこからか白いギターを取り出しては歌まで歌い出す、永遠の若ムツゴ○ウ、偵察持ちのこのビーストマスターラキールにより、探索は進みミスリルより強力な魔法金属アダマンナイトの発見や、ドラコニアンやドワーフの中立都市の発見と併合により戦力強化に成功。
ついに戦線の押し上げに成功したのだ、だがそれでも尚、シャーリ軍はしぶとい、
土俵際に追い詰めたと思えば、粘る事しきりである。
馬鹿のひとつ覚えのようにウルフのわんわん大行進とグールの通せんぼである。
あと一押し、あと一押しが欲しい。
そんな願いが天に通じたのか、使い魔が一人の英雄連れてきた。
最近名声が上がってきたせいか、以前はブシャン以降、ひょっとしてこのままもう英雄は仕官してこないのではないか、ずっとこのままこのぴよよん髭親父と共に行くのではないかと悩んだ日々が嘘のようにラキールに続いての英雄の仕官である。
ただそれがどんな英雄かが問題である。
「マスター、英雄の方が志願してきてくれました」
雇うべきか雇わざるべきか、かのシェークスピア劇の主人公もかくやと悩んでいる私に使い魔が声をかけてくる。
「マスター、悩んでいるんですか?」
「ああ、確かに対シャーリー戦にあと一押しの戦力が欲しい」
「なら悩む必要はないんじゃ」
「お前も現行メンバーを見て、よくそんな簡単に言えるな、うーむ、今度こそと期待する自分が1とすれば不安に思う自分は100だ」
「じゃあ、止めたらどうですか?」
「うーむ、しかしなぁ、だがなぁ、新たな戦力欲しいし、しかしあのムツゴロウとカヤマが合わさったのが来て以来、もうまともなのが来ないんじゃなかと思うし」
「マスター、悩み過ぎ、10円ハゲ出来てる」
「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
確かにここんとこ言うか、魔術師戦争始まってからこっち頭を抱えてばかりだが、
そんな、そんな事がある筈が無い。この私に10円ハゲなど
「嘘だ、嘘だと言ってくれ」
私は頭をかきむしり・・・いや、これがいけないのか
「はい、嘘です」
「お前も平然と嘘をつくよなっっっっっ!」
バンッと机を叩くが、使い魔は何処拭く風。
人が真剣に悩んだというのに・・・あ、だからこれがいけないのか、
ま、まあ、こいつなりに悩むだけ無駄と言いたいんだろうが、どうしてこいつはこう表現方法がひねているのか、もう少し労りがあってもとぶつぶつ呟いているうちに使い魔が話しを進めていた
「とにかく、来られたのはヒーラーの方です、会うだけ会って、気に入らなければ追い返したらどうです」
「そうだな、そうしよう」

英雄の待つ部屋へ使い魔とともに入ると、中にいた女性が立ち上がり、こちらの手を取ってきた。
「わたしはセレナと申します、ご高名なホルス様にお会えして光栄です」
「う、うむ、そうか?」
「はい、私はここの軍の噂を聞いて、ここしか自分の力の振える場所は無いと思い、志願いたしました。」
「そうですか、」
なんかまともそうな人だった。
今まで会ってきた英雄がアレなのばかりなので、このセレナという英雄が聖人に見えてしまう。
「この方の名前はセレナ、特殊能力は術者と、治癒能力ですね」
「ほう」
地味といえば地味な能力だ、だがどんなとてつもない特殊能力を持とうとも、こちらの精神をゴリゴリ削っていく英雄よりは何倍もましだ。
ようやくまともな英雄が士官してくれた。
思えば長い道のりだった、一番最初が力馬鹿、二番目と三番目でアレ二乗、四番目が永遠の若ムツゴロウ、やっとやっと普通の英雄に会えた気がする。
「セレナ殿よろしくお願いします」
がっしりとセレナの手を力強く握り、任官を認めた
「任せて下さい。マスター亡き後は私が立派に跡を継いでみます」
「は?」
ナニカ、ヘンナコト、イイマシタネコノヒト
「だから安心して死んでください」
私の手をとり満面の笑顔のセレナ。
「・・・・・・いや、私、死なないし」
「そんなっ」
私が当たり前の事を言うと、セレナはまるでこの世の終わりが来たの如くショックを受けた。
「ここのマスターが一番間抜けで御しやすく、魔法リサーチしても全く使いこなせない、へぼ魔術師で、配下の英雄もアレばっかりで統治能力なんてミジンコレベルなんで乗っ取り易いっ聞いていたのに」
「誰だ、そんなこと言ってるのはっっ」
「ショックです、信じられませんっっ」
いや、私はあなたが信じられません。
どう反応して良いのか決めかねている私の前で、セレナは両手で顔を覆ってしくしく泣き出してしまう。
「いや、あの・・・・・」
かと思ったら、がばっとセレナは顔をあげ、
「わたしショックで死んでしまいそうです、マスター責任とって死んでください。」
「死ねるかーっ!!!!」
「ていっ」

ぶす

「うわっ」
剣を刺したぞこいつ。
危うい所でセレナの一撃を避ける事が出来た。剣が椅子に深々と刺さっている。
「はっ!?、私ったら何て事を、つい興奮してとんでもない事をしてしまいました。」
セレナは両手を頬にあてどうしましょうどうしましょうと慌てるが、
どうしてくれようと思うのはこちらのほうだ、こいつはこのまま衛兵に突き出して
やろうかと思ったが
「申し訳ありません、わたし、錯乱して、しては行けない事をしてしまいました。」
うっ、この人、結構美人。
両手を合わせ、涙混じりに訴えられると、仏(使い魔注:スケベ)心が出て、許しちゃっても良いんじゃないかなーなんて思ってしまう
「マスター、お人好し、鍋の具にすればいいのに」
ぼそりと使い魔が怖いことを言う
「ちょっと綺麗だと思って油断してると背中からぶすりですよ」
「いや、でもな、こんなに後悔してるんだから」
「私ったら確実にやれる機会を,狙わないで、突発的にやってしまうなんて、
どうしてこんな事をしてしまったんでしょう」
「おいっっっっっっっっっっ」
「許してください、わたくしマスターが間抜けにも魔法実験で失敗して封印されるのを待ちます、だからもう早まった事はしません、先程のお詫びに誠心誠意仕えさせていただきますので、どうか、家臣の端に加えてください」
不穏過ぎるぞあんたの台詞
「止めた方がいいと思うけど」
「だよなぁ」
使い魔の言葉に私も深く頷く。
「違うんです、本当は私はマスターを毒殺しようとなんか考えてませんっ」
「殺し方が増えているんだが」
セレナはショックを受けてるようだが、こっちはショックを受けてる事がショックだ。
「そんなっ」
互いに何を言って良いのか分からないという沈黙が流れる。
「・・・・じつは私、二重人格なんです」
その沈黙を破ったのはセレナだった。秘めていた事を告白するように、ぽつりと言う。
「は?」
「本当の私ははとても臆病で、こうして人と話をするのも、満足に出来なくて、でもそれでも普通の一般市民として生きていくのだったら、それでも何とかなっていたんです、でも私には特別な才能がありました。そんなのいらなかったんですけど、あってしまったんです」
「はあ」
「その才能が私を放ってはくれませんでした、英雄として日々戦場に立つことを望まれる毎日、私には耐えられませんでした、いっそ死のうかと思った事も一度ではありません」
「はぁ」
なんとも気の毒とは思いたいが、背中の椅子に刺さった剣を見てると、どうにも同情心が湧きづらい。
「でも、ある時、聞いたんです、ろくに使えもしないのに次々と大魔法をリサーチして、一般常識も無いのに他の魔術師を倒して行くそんな不思議魔術師が居るという事を」
「もしかして、私の事?」
「他に誰が」
「私、そこで思いました」
「はぁ」
「こいつはちょろい、こんなのだったら隙を見て、殺って、国を乗っ取れると」
おいっ! なんでそこでいきなり不貞不貞しくなる。
「そうです、まるで今までの自分が嘘のように新しい自分が出てきたんです、なんて素晴らしいんでしょう」
いや、あんた、それ私にとって最悪なんだが、なんで本人の前でそんな目をキラキラさせて語れるんだ?
「もうそれからは、以前の自分では考えられないくらい、勇気が湧いて来るんです、どんな事も出来るような、実際、私は精神的に強くなれました、ですから貴方が居なくなったらと思うと、私は恐ろしくて恐ろしくて」
そんなに恐ろしいのに、こんな事するんかい。
相変わらず椅子に突き刺さった剣が非常に気になる。
「どうかしてました、あなたを失ったら、私も目標を失って、以前の自分に戻って生きては行けないというのに」
そこでまたセレナは、よよよよと、泣き崩れる。
「絶対に裏切りません、行為だけに留めます、絶対成功させません、だから私を部下にしてください!!」
いや、だからその行為自体を止めてもらいたいんだか・・・
セレナにすがりつかれて途方にくれる私であった。

「・・・・で、結局雇ってしまったと」

壁に手を当て、反省のポーズ
そう、結局セレナに押し切られてしまった。
「だって仕方無いじゃないか、そうしないと死ぬって言うし、敵に雇われたら、私の命を全力で狙ってきそうだし」
「死なせておけば良いんですよ、そんな人」
「おまえ、随分つっかかるな」
「マスターの方こそ自分を殺そうとした人に対して。良くそんなに平気でいられますね」
「うん、まあ、そこは何というか変人には耐性が出来ているというか」
そう、私もだいぶ鍛えられたのだ、特に不本意な方面にだが。
「はぁ、まあいいです」
納得したように言う使い魔だが、言葉の端々に苛立ちが見える。
「なんでお前、そんなに怒っているんだ」
「当たり前じゃないですか、あの人マスターを殺そうとしたんですよ、これが怒らずにいられますか」
「お、お前」
普段人を虚仮にすることしか考えてないと思っていたが、実は少しは主人を思う気持ちがあったのかと、少し胸にじーんと来た。
「マスターが何も知らないはいはいの時から面倒を見続けて、やっと少しは一人前に近づきつつあるかなって、思わなくもないような気がする、今日この頃になったのに」
「・・・・また随分微妙な評価だな」
「あんな人にマスターは殺させません」
「おお」
きっぱりと言い切る使い魔に、わたしは思わず感嘆の声をあげる。
「マスターを殺すのは僕です」
「って、おいっっっ」
「いえ、殺すなら、いっそ僕がって話ですよ、本当に殺る訳無いじゃないですか」
「本当か、本当なんだな、信じて良いんだな」
「やだなぁ、マスター、目がマジですよ」
「自分の命がかかっているんだ、マジにもなるわい」

こんな風ではあったが、とにもかくにも新たな英雄を雇い、その後ほどなくドラコニアンの傭兵部隊も雇えた。
私の名声も中々なものになったもんじゃないかと感慨に耽っている内に、第二の転機がやってきた。
そう唐突に。
その時の私は、丁度食事時だった。
食事内容はメイドA(使い魔を裏主人と思っている連中などABCで十分、決して名前を覚えられるくらい親しく接してくれないという訳では無い)が作った創作料理だった。どうも小麦粉をよく練って細く伸ばし、海草類でダシをとった熱いツユに入れ、ネギという野菜を細かく切ったものを少量乗せて食べるものらしい。
会心の出来だったそうで
使い魔様が猫舌でさえなければ・・・よよよと、泣くメイドがその出来映えを保証していた。
勿論そんな姿見てなかった事にし、じゃあ、何かい、私はあいつの残飯処理かい、などという考えなど、頭の中を素通りさせ、私って本当に心の広い主人だなぁとしみじみ思いながら、ウードンと名付けられた料理を食べようとしていた。
麺を啜る、ふむ、ツユと絡み合い麺のコシもあって美味い。
ツユを飲んでみる、これまたダシが効いてるし、少量のネギが香ばしい、もう一口とツユを飲もうとした時
「ブシャン参上っっっっっ」
「ぶはっ!?」
いきなり、ぴよよん髭の親父が部屋に飛び込んできた。
「主殿っ、このブシャン、進言する議があって参った、主殿、主殿!」
「げほっ、げほっ」
ツユが器官に入った、ネギが鼻からネギが、ぐは、麺が服の中に、熱いでおじゃりますがなと、人が大変なのに。
「このブシャン、至急主殿に進言した議があって参った、なのにどうした、どうしたと言うのだ、主殿!」
見て分からんのかお前は。
お前の濃すぎる顔が突然ドアップで迫ったんだぞ、そりゃ驚いて、むせて苦しむのが自然の理だろ。
「何故だ、何故話を聞こうとせずに俯いている、主殿、話を聞いてくれ」
お前こそ人の話・・・・というか人の様子を見て察しろ、そもそも誰のせいでこうなったのかと思って居るんだ。
「ふむ、そうか分かったぞ」
ぽんとブシャンは手を叩く。
そうか、分かったか、それは良かった、だったら背中でもさすってくれ。
「我輩の、この溢れんばかりのこの高貴さに改めて感銘を受けて、平伏せざるを得ないと言うのだな」
「え゛ーぼ、ごぼっげほっごほっごぼっ」
人間むせている時に大声を出そうとするものでは無い、本当に死にそうになる。
「ふはははははははははは、分かる、分かるぞ、その方の気持ち」
ここまで人の気持ちも分からん奴も いないと思うのだが。
ブシャンに背中をバンバン叩かれながら強く思う。
使い魔といいメイド達といい、なんで私はこんな連中の主人をやっているんだろうと、疑問に思ってると使い魔が飛び込んできた。
「あー、ブシャンさん、だからマスターは食事中だって言ったじゃないですか」
「む!?、そうなのか、ならば我輩に遠慮することなく存分に食すがいい、」
自分の用件は後にして良いと鷹揚に許しをだすブシャンだが、そもそもなんでこいつに許されなければならないのだろうか?それにそう言ったにも関わらず、目の前から立ち去ろうとしない、じっとこちらを見ている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
食事というものは環境も大事ではなかろうか。
なにが悲しくて、ぴよよん髭を指でしごいているターバン親父に見つめられて食事をしなければいけないのか、こんな状況ではどんなご馳走を食べても、ブシャンが気になって味など感じることが出来ない。
「もういい、お前の用件を先に聞こう」
「ふむ、よい心がけであるな」
これでつまらん事を言ったら、このウードンの丼投げ付けてやると心にきめつつ、ブシャンの用件を聞く。
「この戦線の膠着状態いつまで続けているつもりだ?」
ふむ、どうやら珍しく真面目な用件できたようだ
「いや、いつまでも続けているつもりがないが、敵のウルフ部隊がやっかいでな」
「せっかくアダマンナイト部隊という打撃力のある部隊を手に入れたのだ、これを生かさぬ手はなかろう」
ふむ、ますます珍しい事に本当に真面目な話題のようだ、
使い魔も変なちゃちゃを入れず聞き入っている。
「いくら蜥蜴の尻尾を切っていても切りがない、しかも他の大陸に出した偵察隊の話ではそこで別の魔術師が勢力をのばしていると聞く、このままではまずい事になるぞ」
「その通りだ」
「そこでだ、我輩は提案する」
ブシャンは机に地図を取り出す
「敵の首都は判明しておる、であるからして、敵の尻尾手足など気にせず、アダマンナイト部隊を含めた主力部隊で一気に敵の頭を」

だんっ

ブシャンは短刀を地図に突き立てた。
「潰すか」
「うむ」
確かにこのまま叩き合いをしていても、いつまでたっても終わらない泥仕合を繰り広げるだけ、他の魔術師が台頭してきている今、ぐすぐすしていれば漁夫の利を得られる事になる、かつてのカーリー軍の弱体ぶりと末路が頭に浮かぶ。
最悪、シャーリ軍がその魔術師と手を結び、こちらに攻めかかって来るとも考えられる。
こちらの主力はシャーリー軍との戦いで全て大陸に渡っている、その為首都のあるこの島は比較的手薄な状態だ、そこを別の魔術師が大船団を押し立てて攻めてくれば。
ぶるりと自分の想像に身震いする。
「確かにこちらに打撃力のある部隊が手に入った以上、それを無駄にするのは愚作だな」
「うむ」
ブシャンは我が意をえたりと力強く頷く。
一見ばくちにも見えるが、シャーリー軍とてわが軍との戦いで少なからず疲弊している。
ウルフ部隊の構成部隊数は少なくなっており攪乱が主目的で、かつてのように町を落すという事は無くなっている。その間隙をつくならば、これは成功率の高い作戦となる
「よし、決めた、シャリー軍の本拠地を打つ、ブシャン早速主力部隊を率い、わずわらしい手足どもの動きを止める為、敵の頭を潰してこい」
「うむ、よかろう、ならばいま直ぐ出立する朗報を待つが良い」
うはははははといつもの高笑いをあげながらブシャンは退出した。

「マスター、いつになく真面目な話でしたね」
「ああ、変なオチも無かった」
「ほんと珍しい」
いや、それが普通なんだがと思わぬでもなかったが、まあ、ブシャンの用件も終わった、食事を再開しようとしたが

「すっげー、のびてる・・・・・」

やっぱり、なんらかしかのオチがついている私の日々であった。

こうして我が軍は主力部隊をシャーリー軍首都へむけて進発させた。
その動きを察知したシャーリー軍は自軍の英雄もふくめウルフ部隊をも首都へ集結させて、決戦に備えたのだが、これは失策だった。
ウルフ部隊の最大の驚異はその機動力にある、なのに、少しでも守備兵力を増やそうという意図なのだろうが、展開させていたウルフ部隊を集めてわざわざ城壁内に押し込めて、機動力を自ら封じ込めてしまったのだ。
ここで戦の趨勢がきまった。
ウルフ部隊の神出鬼没ぶりな奇襲に悩まされていた我が軍は、これでその脅威から逃れ、戦力の集中が容易となったのだ、こうして主力同士の首都攻防戦が始まったが、アダマンナイトで武装した部隊の遠距離攻撃の勢いは凄まじく、機動力を封じられたウルフ部隊は真価を発揮できぬまま壊滅、大量のグール部隊もバーサーカー軍団が蹴散らしていった。
城門の守備の指揮をとっていた敵の英雄であるダニエルが倒れると、守備隊の士気は崩壊、知性の無いグール部隊や召還魔法生物の散発的な攻撃を仕掛けてくるが、これを簡単に退け、町に雪崩れ込だ部隊はまっすぐにシャーリの居城へと迫り、シャーリ自身を封印、こうしてシャーリーもまた我が軍の軍門に下ったのだった。
ムクドリ
2008年04月28日(月) 17時31分10秒 公開
■この作品の著作権はムクドリさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
長かったリプレイ記も次が最後です。

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ここまで他の魔導師って黒持ちばっかりなんですね。すぐに戦争になっちゃうのも仕方ないかもしれません。 10 月読 ■2008-07-30 01:00:17
後半だれがちなゲームですがよく頑張られましたね。 10 あむぁい ■2008-06-25 23:46:53
合計 20
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